どうもじんでんです。高圧受電設備の形態には、CB形とPF・S形の2つの種類があります。その中でもPF・S形は、変圧器の容量が300kVAまでと決まっているのはご存知かと思います。
この300kVAという上限は、なぜそのように決まっているのかと気にしたことはありませんか?
決まりだからと言えばそこまでですが、技術者として気になりますよね。そんなPF・S形の上限300kVAの謎について調べてみました。
※この記事はあくまでも考察となっています。様々な資料から考察していますが、確かなものではないのでご了承ください。
PF・S形とは?
高圧受電設備には、大きく分けて2つの形態があります。それはCB形とPF・S形です。
それぞれの違いは主遮断装置に何を用いるかです。
CB形では高圧交流遮断器(CB)を使用します。一般的には真空遮断器(VCB)を使用します。PF・S形では高圧限流ヒューズ(PF)と高圧交流負荷開閉器(LBS)を組み合わせて使用します。
PF・S形は変圧器容量が300kVAまでなどの制約があり、小規模な高圧受電設備に採用されます。
上限が300kVAの理由を考察
PF・S形の変圧器容量の上限が300kVAとされている理由を考察します。
様々な観点から見ていきましょう。
ヒューズの容量
はじめに考えられるのがヒューズの容量ではないでしょうか。
LBSのヒューズの上限から、300kVAが上限とされているのではないかと考えてみます。
すぐに答えは分かりますが、これは間違いです。300kVAを超える変圧器の保護装置としてLBSは適切です。よって、それらに見合ったヒューズも用意されています。
よってヒューズの容量の上限が理由ではないことが分かります。
保護協調
次に保護協調で考えてみます。
上位の電会社変電所との保護協調の関係で、上限が決まっているのではないでしょうか。
しかし先ほどのヒューズの容量とも被りますが、300kVAを超える変圧器の保護装置としてLBSは適切です。
それで上位との保護協調に問題があるなら、PF・S形に限らずCB形でも問題が発生するはずです。
これらの理由から単純な保護協調の問題ではないことが分かります。
しかし理由として保護協調は関係していそうです。
高圧受電設備規程
電気の資料は色々とありますが、その中で高圧受電設備規程を調べてみました。
高圧受電設備規程でPF・S形の保護協調について触れられている項目があります。
その中に答えに近いものが記載されていました。
配電用変電所(電力会社の変電所)の過電流継電器の整定値は様々ですが、その中でも厳しい整定値で考えると、PFの上限値はG50Aとなるそうです。過電流継電器が静止形の配電線においてはG40Aが上限値となります。
このPFのG50Aで保護できる変圧器容量は、最大で300kVAとなります。
このことからPF・S形の上限値が、300kVAまでとされているのではないでしょうか。
高圧受電設備規程では、PF・S形の上限値についての言及は記載されていませんのでご注意ください。あくまでも私の解釈です。
PF・S形だから300kVAまで大丈夫という訳ではない
前述の保護協調の件で、誘導形の過電流継電器を採用している配電線なら、最大値は300kVAとなっています。しかし静止形ではG40Aとなり、その最大は200kVAとなります。
また最大で300kVAというだけで、単相変圧器と三相変圧器の組合せ次第ではG50Aでは保護できません。
これを踏まえると、PF・S形だから300kVAまで大丈夫というのは誤りだと気付かされます。
300kVAは規格上の上限値であり、実際の保護協調を考えると適切ではない場合が存在するということになります。
例として挙げられる、配電用変電所の厳しい整定値がどれほど実在するかは不明ですが、しっかりと保護協調を考える必要がありそうです。
まとめ
- PF・S形の上限値が300kVAの理由は保護協調
- 配電用変電所の中でも厳しい整定値からきている
- PF・S形だから300kVAまで大丈夫とはならない
今回はPF・S形の300kVAについて考えてみました。ある程度はまとめていますが、若干の疑問が残る部分もあります。
規格はただ規格ですが、その成り立ちや理由も含めて知っておきたいですね。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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