どうもじんでんです。今回は高圧受電設備の保護継電器の1つである、地絡過電圧継電器(OVGR)について記事にしました。
地絡過電圧継電器(OVGR)とは?
地絡過電圧継電器には色々な呼び方があり、「OVGR」や「64」とも言います。「OVGR」は「Over Voltage Ground Relay」の頭文字をとった略語です。
「64」は日本電機工業会(JEMA)にて定められている制御器具番号に由来しています。
地絡過電圧継電器(OVGR)は、回路の地絡電圧の上昇を検出する為に設置されます。地絡電圧は零相電圧とも呼びます。電圧が整定値を上回ると動作します。
地絡過電圧継電器(OVGR)の設置の目的
地絡過電圧継電器(OVGR)は回路の地絡を検出する為に設置されます。
地絡の検出には電流と電圧の2通りがありますが、地絡過電圧継電器(OVGR)では電圧により検出をおこないます。
特徴は零相電圧は回路全体に発生するので、自所の地絡だけでなく他所での地絡も検出します。その為に通常の6.6kV受電の需要家では、設置される事は少ないです。
設置されるのは次のような設備がある時です。
- 高圧発電機が設置されている設備
- 太陽光などの発電設備が連系している設備
- 特別高圧で受電するから設備
- 太陽光発電所などの発電所
主に、系統に連系される発電設備がある需要家に設置されます。
地絡過電圧継電器(OVGR)の構成機器
地絡過電圧継電器(OVGR)は、零相電圧を検出する必要があります。
その為に接地形計器用変圧器(EVT)か零相電圧検出器(ZPD)が必要です。
零相電圧検出器(ZPD)の基本については、こちらの記事をご覧下さい。
接地形計器用変圧器(EVT)の基本ついては、こちらの記事をご覧下さい。
地絡過電圧継電器(OVGR)の配線図の整定値
地絡過電圧継電器(OVGR)には「動作電圧」と「動作時間」の2つの整定項目があります。
系統に連系する発電設備の為に設置してある場合は、基本的に電力会社から指定されます。
動作電圧
動作電圧は、零相電圧がこれを超えると検知する値です。単位は基本的に%です。地絡方向継電器のV0と同じ考え方になります。
系統連系規定にて、「連系する電力会社の変電所に設置の地絡過電圧継電器の整定値」と比べて「同等又はそれ以下(厳しく)」に整定すると決められています。
動作時間
動作時間は、先ほどの動作電圧を零相電圧が超えた状態が何秒間、継続した時に動作するかを決めます。
零相電圧は回路全体に発生するので、健全な回路の不要動作を防ぐ必要があります。なので「連系する電力会社の変電所に設置の地絡過電圧継電器の整定値」と比べて「同等」にするのが望ましいです。
これは電力会社からの指定で、多くは「1秒」に整定される事が多いです。
これは確証はないですが、「B種接地抵抗値の計算に使用する、地絡を除去できる時間(1秒以下)に関係しているのでは」と考えています。1秒を超えるとB種接地抵抗値の計算が変わり、値が変化してしまします。その為に最大値の1秒にしているのではないでしょうか。
地絡過電圧継電器(OVGR)の配線図
地絡過電圧継電器(OVGR)の配線図の一例を示します。

[Y1]及び[Y2]は、零相電圧検出装置(ZPD)より入力します。零相電圧の入力回路です。
[P1]及び[P2]は、制御電源です。
[T1]及び[T2]は、PCSの停止や遮断器の開放の信号として利用します。
[a1]及び[a2]は、警報回路に利用します。
需要家に設置が必要ない理由
先ほども言いましたが、零相電圧は回路全体に発生します。回路とは電力会社の変圧器の二次側(6.6kV側)の事を指します。なので同じ変圧器に繋がっていれば、どこで地絡が発生しても等しく零相電圧が発生します。
この特徴から、零相電圧では地絡点の特定は困難です。
その為にまずは、地絡継電器(GR)及び地絡方向継電器(DGR)にて地絡電流を検出して地絡点の除去をします。何らかの理由により除去できなかった場合は、電力会社の変電所に設置の地絡過電圧継電器(OVGR)で検出し除去します。地絡除去の最後の砦的な感じで設置されています。
これらの理由より、通常の需要家では地絡過電圧継電器(OVGR)は必要ありません。
発電所に設置が必要な理由
最近は太陽光発電設備の普及により、高圧で連系する発電所が増えました。そこには必ず地絡過電圧継電器(OVGR)が設置されています。これは系統連系規定にて定められているからです。
これの理由について、もう少し踏み込んで解説します。
仮に台風などで電線が切れた場合を考えてみましょう。配電線の途中で、電線が切れて地面に垂れ下がっているとします。これにより電力会社の変電所は地絡過電圧を検出して、送電を停止します。
しかし地絡過電圧継電器(OVGR)がない太陽光発電所だと仮定すると、送電を続けてしまします。こうなると電線に接触しての感電が考えられ、一般公衆の感電や復旧作業の困難が考えられます。
このような事から、発電所には地絡過電圧継電器(OVGR)が必須となっています。地絡過電圧継電器(OVGR)は動作すると、パワーコンディショナー(PCS)を停止させます。
需要家の受電設備に、低圧で連系する太陽光発電設備がある場合に地絡過電圧継電器(OVGR)が必要なのもこれと同じ理由です。
まとめ
- 地絡過電圧継電器は「OVGR」や「64」とも呼ぶ
- 地絡状態を零相電圧にて検出する
- 「動作電圧」「動作時間」の整定項目がある。
- 通常の需要家では基本、設置されない
- 発電所や発電設備が連携する設備には必要
地絡過電圧継電器(OVGR)は太陽光発電設備の増加により、よく見かける設備になりました。
しかし整定値を含め、電力会社から指定させることもありよく把握できていないことも多いと思います。しっかりと理解しておきたいものです。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
コメント
大変お世話になります。
6.6kV配電線の計画的な停電(電力会社変電所側での意図的な送電停止)があった際にも決まってOVGRが働きますが、この時も三相の電圧バランスが崩れ整定値以上の零相電圧が1秒以上発生していると言う事でしょうか?
恐れ入ります、教示下さいませ。
愚問かもしれませんがググっても納得できる記事がなく、結局じんでんさんの記事に辿り着いてしまっています。
梅三郎さま
コメントありがとうございます。
停電時に電圧がアンバランスになる事は理解できます。
しかしそれが1秒以上継続するのかな?と思います。
しかし動作が間違いないのなら、そのような現象が発生しているのでしょう。
答えになっておらず申し訳ございません。