どうもじんでんです。今回は過電流継電器(OCR)の整定値の決め方についての解説です。
当サイトでは、過電流継電器(OCR)のタップ計算ツールを公開しています。
これを使えば簡単に計算できますが、なぜこの様になるのかはぜひ知っておいてもらいたいです。
過電流継電器(OCR)とは?
過電流継電器は「OCR」とも呼ばれる保護継電器の一種です。文字通り、過負荷や短絡時の過電流から系統や機器を保護する目的で設置されます。
過電流継電器(OCR)の基本については、こちらの記事で解説しているのでご覧ください。
大まかな流れ
始めに過電流継電器(OCR)の整定値を決める流れを紹介します。
- 容量を決める
- 一次電流を求める
- 計器用変流器(CT)二次側の電流を求める
- 限時及び瞬時の裕度を決める
- 限時及び瞬時のタップを決める
それぞれの項目について詳しく解説していきます。
また整定値の事をタップと呼びます。
※この記事では整定動作電流値のみの解説をしています。OCRは動作時間の整定も必要です。
容量を決める
まず基準となる容量を決めます。
各書籍やネットの情報では、よく契約電力を採用するとされています。しかし変圧器の容量で計算する場合もあります。それぞれメリットデメリットがあるので、これについては別の記事で解説したいと思います。
この容量は、想定される定格電流を求める為に必要です。
容量については、対象の過電流継電器(OCR)に接続される計器用変流器(CT)より下位の合計となります。変圧器容量で算定するなら、下位に接続される全ての変圧器の合計となります。
電流を求める
まずは電流を求めます。
一次電流を求める
先ほど決めた容量から、定格電流を求めます。この定格電流は計器用変流器(CT)を流れるので、計器用変流器の一次電流とも言えます。
定格電流=CT一次電流となります。
定格電流は下記の式で求められます。
定格電流=容量[kW or kVA]/(√3×電圧[kV])
※正確には単相変圧器なら上記式の√3は不要ですが、私は単相変圧器も含めて上記式で計算しても差し支えないと考えています。
計器用変流器(CT)二次側の電流を求める
計器用変流器(CT)の一次電流と変流比から二次側の電流を求めます。
この電流が、実際に過電流継電器に流入する電流となります。
例として、一次電流が100AでCT比が200/5であれば下記の通りです。
CT二次側電流[A]=一次電流/CT比
=100/(200/5)
=100/40
=2.5[A]
タップを考える
ここからはタップを考えます。
裕度を決める
これまでに求めた電流はどれも、容量に対して100%定格の電流です。この値を過電流継電器のタップに採用してしまうと、定格時に動作する事になります。また突入電流などによっても動作する恐れがあり、問題があります。
これらの理由により、通常は裕度を持たせてタップを整定します。
限時要素は、一般的に120%から150%にします。
瞬時要素は、一般的に1000%から1500%にします。
高圧電動機がある回路では、始動電流が大きい事から上記に当てはまらない場合があります。
またOCRのタップは一般的な機種では0.5A単位となっています。必ずしも計算値と合致する訳ではありません。この様な場合は、直近上位のタップを採用しましょう。
タップを計算する
計器用変流器の二次側の電流に、先程の裕度を掛けた値が整定値となります。
例として、CT二次側電流が3Aで限時要素の裕度を150%、瞬時要素の裕度を1000%とすると下記の通りになります。
限時タップ=CT二次側電流×裕度=3×1.5=4.5[A]
瞬時タップ=CT二次側電流×裕度=3×10=30[A]
例題
これからは単線結線図を用いて、実際に計算してみましょう。ここではわかりやすい様に、変圧器容量を基準として採用します。
※単線結線図はわかりやすい様に簡略化しています。
この単線結線図内のOCRの整定値を考えます。
まずは容量を算定します。
図には3台の変圧器があります。しかしOCRに接続されるCTより下位に接続される変圧器は2台です。よって整定値を決める上での容量は、2台の変圧器の合計となります。
容量=200+300=500[kVA]
次に容量から一次電流を求めます。
一次電流=容量/(√3×電圧)=500/√3×6.6=43.79[A]
次に一次電流からCT二次側の電流を求めます。
図からCTの変流比は200/5であることが分かります。
この変流比と一次電流から、CT二次側電流を求めます。
CT二次側電流=一次電流/変流比=43.79/(200/5)=43.79/40=1.09[A]
CT二次側電流がOCRへの入力電流なので、これに裕度をかけたものが整定値となります。
ここでは限時要素の裕度を150%、瞬時要素の裕度を1000%とします。
限時要素=1.09×1.5=1.635[A]
瞬時要素=1.09×10=10.9[A]
タップ値と一致しないので、直近上位のタップを整定値として採用します。
すると限時要素は2.0[A]、瞬時要素は15[A]となります。
まとめ
- OCRの整定値は契約電力か変圧器の容量から算定する
- OCRはCT二次側に接続されるので、換算が必要
- 定格で動作しない様に裕度を設ける
OCRの整定の計算は分かっていれば簡単ですが、なかなか理解できていない人も多いです。
特に電気主任技術者は、しっかりと理解しておきたいポイントです。これが分かっていないと保護協調も考える事ができません。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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