地絡方向継電器の零相電圧が5%で190Vの理由

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高圧受電設備

どうもじんでんです。今回は地絡方向継電器に関連するお話です。多くの地絡方向継電器の零相電圧は、5%で約190Vで動作するのはご存知の事かと思います。しかし「何の5%で190Vなのか?」は理解していない人も多くいます。これについて解説していきます。

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方向性地絡継電器とは?

地絡方向継電器とは主に、6600Vで受電する高圧受電設備に設置される保護継電器の1つです。詳しくは次の記事を見て下さい。

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動作電圧の整定値と動作値

地絡方向継電器の整定値には「動作電圧」の項目があります。これは零相電圧の大きさが、どの位で動作するかを決めます。

整定値

整定値はほとんどの機種で単位は「%」になっています。6600Vで受電する需要家の責任分界点に設置されるPAS用の地絡方向継電器は、「5%」に整定するのが通常です。

これは上位の電力会社の変電所と保護協調を取る為で、電力会社から指定される値です。

動作値

停電点検などで地絡方向継電器の試験をすると、零相電圧の動作値は「約190V」で動作します。

※5%整定値の動作値です。

これについては、試験などを実施した事がある方はご存知じの事かと思います。

整定値と動作値の関係性

先ほどの事より整定値が「5%」の時に、動作値が「約190V」になります。単位が違うので、理解し難いですよね。

では5%で約190Vならば、100%では何Vになるでしょう?

その前にまず今後の計算で混乱するといけないので、1つハッキリさせておく事があります。これまで約190Vと言っていましたが、あくまでも約であり正確には190.5Vです。

計算より100%の時の電圧は「3810V」になります。

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3810Vは何の電圧?

先程の計算で100%の時に3810Vになるのがわかりました。

さてこれは何の電圧を指しているのでしょうか?

先に結論から述べるとこれは「完全一線地絡時の零相電圧」です。これを理解するには零相電圧について知らなければいけません。

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零相電圧とは?

零相電圧とは、三相交流回路における「中性点の対地電圧」を指します。「V0(ブイゼロ)」とも呼びます。通常(対称三相交流)の場合は0Vになります。電圧の大きさや位相が不揃いになると電圧が発生します。

V0は次の式で求められます。

V0=(Ea+Eb+Ec)/3

また対称三相交流の場合は次の式が成立します。

Ea+Eb+Ec=0(V)

これにより、対称三相交流時はV0=0(V)になります。

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完全一線地絡時の零相電圧

これからは、6.6kV配電系統(中性点非接地)における完全一線地絡時の各電圧について解説します。完全一線地絡とは、三相の内の一相が完全地絡している状態を指します。今回a相が完全地絡いているとします。まずはベクトル図をご覧下さい。

ベクトル図より、この時の各電圧について次の事が言えます。

  • 事故相の電圧=Ea’=0
  • 健全相(Eb’とEc’)の電圧は通常時の√3倍になる=線間電圧と同じになる
  • 線間電圧は変わらない

V0を公式より導く為にまずは、Ea’+Eb’+Ec’を計算します。これらはベクトル量なので単純な足し算はできません。Ea’については0がわかっているので、Eb’とEc’を合成すればいいです。

先程のベクトル図をEb’とEc’だけにし、合成したものは次の図になります。Eb’とEc’はこれまでの計算より6600Vです。

これよりEa’+Eb’+Ec’=Eb’c’=11430Vになります。

なのでV0=11430/3=3810(V)となります。

そしてこれが最初に書いた100%で3810V、5%で190Vの正体です。

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何故、3で割る必要があるのか?

ここで疑問があります。

「零相電圧を何故、3で割るのか?」

私もこれについてなかなか理解する事ができませんでした。私の感覚では零相と言えば「全てをベクトル合成してはみ出たもの」と言う認識でした。

この感覚で言うとV0は、先程の図でいけば11430Vになります。

しかし定義で11430V/3=3810VがV0です。何故、3で割るのかが理解できません。

これの答えは「V0は各相に等しく発生し、地絡時は3×V0が発生している」「ここでのV0は一相分を表している」と言う事です。

実際の試験では?

しかし試験では190Vで動作しています。本当の地絡時は3×V0が発生するのに、試験ではV0しか入力していません。

ここで実際の試験を思い出してみましょう。PASに付属するDGR試験では「T-E」間に電圧を印加しますが、ZPDに直接電圧を印加する時はどうでしょう?

試験した事がある方は分かると思いますが、ZPD三相分を短絡した状態で一次側と対地間に電圧を印加しますよね。これは試験器の出力はV0=190Vですが、ZPD側で見れば三相に190Vづつ印加されている事になり、結果3×V0を発生させている事になります。また一相だけに印加すると190Vではなく、3倍の570Vで動作する事からも上記の事が理解ができるでしょう。

T-E間で190Vで動作するのは?

ちなみにテスト端子の「T-E」間で190Vで動作するのは、内部に試験用のコンデンサがあり、それが三相分の合計の容量になるようになっているからです。一次側を短絡し対地間に印加するのはコンデンサの並列回路なので、一相分をCとするなら試験用のコンデンサを3Cにすれば同じ事になります。

また三菱製などで1/10の19Vで動作するものもありますが、これも同じ理屈です。「T-E」間の試験用のコンデンサを調整すれば、入力電圧を小さくしても同等の動作が可能です。

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まとめ

  • 地絡方向継電器の零相電圧は5%整定で190Vで動作する
  • 100%に戻すと3810Vで、これは完全一線地絡時の零相電圧
  • 零相電圧は各相電圧をベクトル合成して3で割ったもの
  • 試験器ではV0(190V)しか入力していないが、模擬的に3×V0入力している

零相電圧については、インターネットなどにもっと詳しい情報はあります。しかし殆どが、理論から述べられておりとっつき難い内容となっている事が多いです。また実際に試験する人目線ではないので、内容がリンクし難いです。

今回の記事は、電気主任技術者やその他の地絡方向継電器を試験すると人向けに噛み砕いて説明しています。あくまでも感覚的に理解してもらいたい為です。これを足がかりにすれば、より零相電圧についても理解が深まるかと思います。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

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