どうもじんでんです。今回はVCBの動作により停電した事故についてお話しします。原因の特定方法とどのように安全に復電させるかなど、思考をフル回転させて電気を送りました。
主幹のVCBが「切」になり停電
ことの始まりは、「構内の電気が全て使えない。停電している」との電話からでした。PASが切れている可能性もあるので、一通りの機材を揃えて現場に向かいました。
現場について現状を確認すると、キュービクル内の主幹のVCBが「切」並びに過電流継電器(OCR)が瞬時動作の表示をしていました。瞬時動作であれば、短絡の可能性が高いということです、
この状況から推察されるのはVBC二次側での「小動物や異物による短絡」「変圧器の内部異常による短絡」などです。
PASは入っていて、VCB一次側までは充電されていました。キュービクル内部の点検を安全に行う為に、とりあえずPASを開放し短絡接地を取り付け点検開始です。
異常が無い
小動物や異物による短絡であれば、大電流によるコゲなど目に見えて異常があるはずです。しかしそれらは見当たりません。絶縁抵抗を測定しても異常はありません。
こうなると変圧器内部での異常が考えられます。油入変圧器なので、蓋を開けて内部点検をしました。もし内部で短絡していると、油面にコゲやススのようなものが浮遊しています。点検するとそれらは見当たりません。
また念の為にコンデンサも相間の容量測定もしましたが、バランスが取れていて問題ありませんでした。
ここまでの点検結果より、短絡が原因ではない可能性がでてきました。
他に考えられる原因
こうなってくると短絡ではない、他に原因があると考えられます。
まずは電力会社側の停電により、再送電された時に突入電流で動作した可能性です。これについては、電力会社に確認して無かったとのことでした。
それでは他にどのような原因が考えれれるでしょうか?
この段階で私の中では、過電流継電器の誤動作ではないのかと思うようになっていました。
過電流継電器の試験をするも…
過電流継電器の誤動作を疑って、試験をすることにしました。
結果は異常がありません。動作値、動作時間、結合動作どれにおいても異常がありませんでした。
しかし気になる点がありました。それは動作表示です。
動作表示がおかしい?
過電流継電器には限時動作と瞬時動作、それぞれの動作表示がついています。
限時動作時は限時の動作表示のみが表示され、瞬時動作時は限時及び瞬時どちらも表示します。瞬時動作時の表示は機種にもよるかもしれませんが、試験時に今回の機種はどちらも表示することを確認しています。
最初に確認した時を思い出すと、確か瞬時の動作表示だけだったはずです。これはおかしいですね。本来の動作とは違っています。
これより、過電流継電器の誤動作の確率が高まりました。また過電流継電器は誘導型で、製造より約30年近く経っているものです。誤動作の可能性はより高くなりました。
しかし「確実にこれだ!」と言える確証はありません。
安全に配慮しながら受電する
過電流継電器の誤動作を疑いながらも確証はありません。しかし、このまま電気を送らない訳にはいきません。
一通り試験もしているので、問題無く電気を送れるはずです。しかし万が一があるので、何かあっても確実に保護装置が働くように受電しなければいけません。
まずはPASのSOG制御装置の電源確保です。この事業場では電灯変圧器より、SOG制御装置の電源をとっていました。今回はVCBを切った状態で一旦、受電して後に送電しようと考えました。このようにするとVCBを投入するまでは、無保護になってしまいます。それではいけないので、ポータブル発電機よりSOG制御装置の電源を確保した状態で受電する事にします。
こうする事で万が一、地絡があってもPASで開放されて波及事故になりません。しかし短絡は保護できないので注意が必要です。
問題無く送電完了
まずはPASからVCBまで受電します。緊張の一瞬です。何があっても良いように、キュービクルの扉を閉めて受電します。
PASを投入すると問題無く受電できました。高圧の電圧も異常ありません。
これよりVCBの投入です。VCBを投入すると電灯変圧器、動力変圧器ともに電圧に異常はありません。少しだけ時間を置いて、低圧ブレーカーを順次投入し送電完了です。この後にSOG制御装置の電源を通常状態に戻し、後片付けをして作業終了です。
お客さまには、早急に過電流継電器を取り替えてもらうようにお願いしました。一度ある事は二度あることも考えられますので。
今回のポイント
- VCBの瞬時動作では短絡を疑う
- 短絡の特定には外観点検や絶縁測定、変圧器の内部点検などをする
- 過電流継電器の誤動作の可能性もある※誘導型(円盤型)なら尚更
- 受電の際は確実に保護装置が働くようにしてする事
今回のような事象は本当に困ります。原因がハッキリしないと、自信を持って受電できません。しかし電気を送らない訳にもいけません。様々なことを考えて、1つずつ可能性を消していくしかありません。最終的にはキチンと保護装置を働くようにして、受電するのが全てかなと思います。一歩間違えれば波及事故です。決してあってはいけません。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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