どうもじんでんです。高圧受電設備の保守において、大事な点検の1つに高圧ケーブル診断があります。高圧ケーブルを診断するにあたり、G端子接地方式を用います。
今回はG端子接地方式の目的や特徴、原理について解説します。
高圧ケーブルとは?
高圧受電設備では、高圧ケーブルを使用します。高圧ケーブルは主に2つの種類に分類されます。
- CVケーブル(3C)
- CV-Tケーブル
CVケーブルは、1本の電線に心線が複数あります。高圧受電設備では殆どが、3つの心線があるCV-3Cを使用します。
対してCV-Tケーブルは、1つの心線からなるCV-1Cを3本より合わせてできています。
どちらも長所、短所がありますが、近年では多くの現場でCV-Tが採用されています。
CVケーブルとCV-Tケーブルの断面図は、下記の画像をご覧下さい。
高圧ケーブルの基本についてはこちらの記事をご覧ください。
G端子法が必要な理由
高圧受電設備において、相間は離隔を取るのが基本です。これは高電圧では被覆があっても相間短絡する恐れがある為です。
しかし引込部分などは、管路で地中埋設をしたりして施設する必要があります。管路では、3本の電線を離隔するのは無理があります。
この様な場合に高圧ケーブルを用います。
高圧ケーブルは絶縁性能が高い架橋ポリエチレンで絶縁され、更にシールドで保護されています。なので高圧ケーブルは、相間や他物と接触していても安全に使用できます。
高圧ケーブルは高い絶縁性能が求められる
前述の通り、高圧ケーブルは高い絶縁性能が求められます。
高圧受電設備の保守点検では、絶縁性能を測る為に1,000Vでの絶縁抵抗測定を実施します。
しかし高圧ケーブルの絶縁抵抗測定では、1,000Vの絶縁抵抗測定では不十分とされています。求められる絶縁性能が格段に違うので、少し考えれば理解できますね。
よって高圧ケーブルの絶縁抵抗測定では、1,000V以上の電圧でおこないます。何Vで実施するかは、状況や組織のルールによって変わりますが、5,000Vや10,000Vで実施することもあります。
通常の高圧機器の絶縁抵抗値は、1,000Vレンジで2,000MΩが最大値で管理します。しかし高圧ケーブルの絶縁抵抗値は一例で100,000MΩと格段に高い絶縁抵抗値で管理します。
保守点検での問題点
高圧ケーブルを高い電圧で絶縁抵抗測定すると言いましたが、保守点検での測定には問題があります。
高圧ケーブルには開閉器などが接続されており、開閉器を切っても一部が接続されたままとなります。
この状態で通常の絶縁抵抗測定を実施すると、高圧ケーブルだけでなく接続されている開閉器などの絶縁抵抗が加味されて低い値となってしまいます。
測定電圧が高ければより顕著に測定値に影響を及ぼすので、正しい高圧ケーブルの絶縁抵抗値は得られません。
かといって高圧ケーブルを切り離すのも容易ではありません。
G端子法なら測定できる
機器が繋がった状態の高圧ケーブルの絶縁抵抗測定において、正確に高圧ケーブルのみの絶縁抵抗値を測定する方法があります。
それがG端子接地方式です。ちなみに、通常の1000V絶縁抵抗計での絶縁抵抗測定はE端子接地方式と呼びます。
G端子接地方式を用いれば機器が繋がった状態の高圧ケーブルでも、単体の絶縁抵抗値を測定することができます。これにより高圧ケーブルの診断が可能となります。
G端子接地方式の原理
高圧ケーブルとその他の高圧機器が接続される状態で、E端子接地方式にて測定すると下記の回路となります。
これでは高圧ケーブルによる電流I1と高圧機器による電流I2の合成電流I3で、絶縁抵抗値が算出されます。よって前述の通り、高圧機器の絶縁抵抗値の影響を受けることが分かります。
ではG端子接地方式での測定はどうなるでしょう。G端子接地方式では下記の回路となります。
高圧ケーブルの導体-シールド間の絶縁抵抗Rpに流れる電流をIpとします。
Ipは絶縁抵抗計の内部抵抗Rvによる電流Ivと、シースの対地間絶縁抵抗Rsによる電流Isの合成です。
Ip=Iv+Is
ここで抵抗値を比較します。仮にシースの絶縁抵抗Rsが内部抵抗Rvより充分に大きいとします。
Rs>>Rv
すると、それぞれに流れる電流の関係は次のようになります。
Is<<Iv
そうするとIsの値は無視できるほど小さく、Ip≒Ivの関係が成り立ちます。
この時の充分に大きい値の具体的な数値は後述します。
すると絶縁抵抗の計測部に流れる電流はIvであり、それがIpとほぼ同じ値ということは、高圧ケーブルの導体-シールド間の絶縁抵抗のみを測定していることとなります。
また高圧機器の絶縁抵抗Rdによる電流Idは計測部を通っていないので、その絶縁抵抗値を除外しているのも分かります。
G端子接地方式の測定方法
ここからはG端子接地方式の測定方法について解説します。
シースの絶縁抵抗値を測定
まずは高圧ケーブルのシールドに接続される接地線を離線します。
低圧絶縁抵抗計でシースの絶縁抵抗値を測定します。絶縁抵抗計のライン端子をシールドに、アース端子を接地極に接続するとシースの絶縁抵抗値が測定できます。
この時の測定電圧(レンジ)は、250Vや500Vが多いです。個人的には500Vをおすすめします。
測定結果が1MΩ以上であれば正常です。前述のしたシースの絶縁抵抗値が充分に大きいとは、この1MΩ以上を指します。
1MΩ以下であれば正確なG端子接地方式による測定は不可です。
G端子接地方式の結線
先ほどのシールドを離線した状態で結線します。
ライン端子を心線へ、ガード端子を接地極へ、アース端子をシールドへ接続します。
ここで結線の注意事項です。
高圧ケーブルのG端子接地方式による絶縁抵抗測定によく使用される絶縁抵抗計に、ムサシインテックのDI-11Nがあります。使用している人も多いのではないでしょうか。
DI-11NはG端子接地方式とE端子接地方式の切替スイッチがあり、配線を変更せずに測定ができます。よってDI-11Nではガード端子をシールドへ、アース端子を接地極へ接続します。
G端子接地方式に切り替えると、内部でガード端子とアース端子が入れ替わります。
DI-11Nで慣れている人は通常の結線が逆に思えるかもしれませんが、本来の結線を理解しておきましょう。
測定
結線が完了すれば、後は測定するのみです。
G端子接地方式が可能な絶縁抵抗計では、1,000V単位で電圧の調整が可能です。
測定電圧は5,000Vや6,000V、10,000Vと様々です。各組織によって測定電圧を決めているでしょう。
また精密に測定するには、時間をかけて測定します。このあたりについては、また別の記事で解説したいと思います。
1相のみの測定もできる
G端子接地方式では、応用として任意の1相のみの測定も可能です。
アース端子をシールドに接続する際に、測定したいシールドのみに接続します。するとその相のみの絶縁抵抗値を測定できます。
始めに3相一括で測定し、結果が良好では無い場合は1相ずつ測定します。
こうすることで全体的に低いのか、特定の1相のみが低いのかを判断できます。
全体的な低下は、湿度など環境的な要因も考えられます。しかし1相のみが低下している場合は、水トリーなど劣化が進行している可能性が高いです。
同じ絶縁抵抗値の低下でも、一括測定と個別測定を使い分けて正しく判断しましょう。
まとめ
- G端子接地方式は高圧ケーブルのみの絶縁抵抗値が測定できる
- G端子接地方式ではシースの絶縁抵抗値も重要
- 結線に注意
- 任意の1相のみの測定も可能
高圧ケーブルは、高圧受電設備の中でも特に重要な設備の1つです。
亘長が長い場合は、取り替えも容易ではありません。使用中に絶縁破壊すると、長期間の停電は免れません。定期点検できちんと診断して、計画的な更新をしたいですね。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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