絶縁抵抗測定による高圧ケーブル絶縁劣化診断方法

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どうもじんでんです。停電点検では様々な試験及び測定をしますが、私が重要視するのは高圧ケーブルの絶縁劣化診断です。

高圧ケーブルは他の高圧機器と比べて、遥かに高い絶縁性能を求められます。もし高圧ケーブルが絶縁破壊すると、長期間の停電を招いてしまいます。

そうならない為にも停電点検でしっかりと測定して、劣化の有無を判断したいものです。

今回はそんな高圧ケーブルの絶縁劣化診断について解説します。

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高圧ケーブル絶縁劣化診断の前提

高圧ケーブルの絶縁劣化診断は多くの需要があり、様々な方法で実施されます。中には無停電で診断ができるものもあります。

しかし今回、この記事で解説するのは絶縁抵抗計を使用した絶縁抵抗測定による診断方法です。

高電圧絶縁抵抗計を使用する

今回の絶縁劣化診断には、絶縁抵抗計を使用します。高圧回路なので1,000Vレンジを有する高圧絶縁抵抗計の使用を思い浮かべるかもしれませんが、それは間違いです。

高圧ケーブルの絶縁劣化診断では、高電圧絶縁抵抗計と呼ばれる1,000V以上の電圧を発生させる絶縁抵抗計が必要です。

6,600Vの高圧回路用であれば、10,000Vまで出力されるものをおすすめします。

G端子接地方式で測定する

通常の絶縁抵抗測定ではE方式と呼ばれる方法で測定しています。しかしE方式で高圧ケーブルの測定をすると、他の接続される機器の絶縁抵抗値の影響を受けて正しく測定できません。

そこで高圧ケーブルの絶縁劣化診断では、G端子接地方式で測定する必要があります。

前述の高電圧絶縁抵抗計であれば、多くの製品がG端子接地方式に対応しているとは思いますが、製品を選ぶ際は注意しましょう。

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測定方法と判定基準

高圧ケーブルの絶縁劣化診断では、通常の絶縁抵抗測定のような1ポイントの測定では不十分です。

ここからは具体的な測定方法と判定基準を解説します。

測定電圧と測定時間

測定電圧は異なる2つの電圧で測定する必要があります。

この2つを第1ステップと第2ステップと呼びます。電圧は一般的には6kV回路では、第1ステップを5kVで第2ステップを10kVで測定します。

この電圧についてはあくまでも例です。高圧ケーブルにストレスをかけるという理由から、これらよりも低い電圧で測定する場合もあります。

測定時間については、5分〜10分間の測定をします。

また測定時には、記録計を接続して漏れ電流の時間変化をグラフにします。記録計を接続しない場合でも、定期的に数値を記録することで簡易的な診断は可能です。

漏れ電流で判定

第2ステップの最終時点での漏れ電流の値により、劣化の有無を判断します。

判定基準はCVケーブルでは下記の表の通りです。

判定
1.0μA 以下
要注意1.0〜10μA
不良10μA 以上
漏れ電流の判定基準

漏れ電流が表示されない絶縁抵抗計の場合は、絶縁抵抗値と測定電圧から漏れ電流を算出することでも判断できます。

弱点比で判定

高圧ケーブルに劣化の兆候があると、試験電圧が高くなるほど漏れ電流が増加(絶縁抵抗値の低下)する傾向があります。

これを判断するのを弱点比と呼びます。

弱点比は下記の式で求められます。

弱点比=第1ステップでの最終絶縁抵抗値/第2ステップでの最終絶縁抵抗値

判定基準は下記の通りです。

判定
1.0 以下
要注意1.0〜5.0
不良5.0 以上
弱点比の判定基準

成極比で判定

高圧ケーブルは大きな静電容量を有しています。そして絶縁抵抗測定は直流電圧の為に充電電流が生じます。

電圧印加直後は大きな電流が流れますが、健全な高圧ケーブルであれば時間経過と共にその漏れ電流はほぼ0となります。

しかし劣化の兆候があると時間と共に漏れ電流が増加する傾向があります。

これを判断するのを成極比と呼びます。

成極比は下記の式で求められます。

成極比=1分値の漏れ電流/最終値の漏れ電流

判定基準は下記の通りです。

判定
1.0 以上
要注意1.0〜0.5
不良0.5 以下
成極比の判定基準

キックの有無

前述の通り、高圧ケーブルに直流電流を印加すると、時間経過と共にほぼ0に収束していきます。

しかし水トリーなどが発生していると、混入している水分が試験電圧により消し飛びます。この時に瞬間的に漏れ電流が増加します。

これを「キック」と呼びます。

キックによる瞬間的な漏れ電流の増加は、絶縁抵抗計のメーターでは追従できず見つけることは困難です。記録計でグラフをとることで、このキックの有無を発見することができます。

測定中にキックが発生する場合は、劣化の兆候がありると判断できます。

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まとめ

  • 高圧ケーブルの絶縁劣化診断は様々な方法がある
  • 絶縁抵抗計は1000V以上の電圧がでる高電圧絶縁抵抗計を使用する
  • 試験電圧と試験時間に注意する
  • 記録計を接続してグラフをとる
  • 結果から様々な判定方法で診断する

高圧ケーブルは他の高圧機器と比較して、より大きな絶縁性能が求められます。よって普通の絶縁抵抗測定では、劣化の兆候がつかめません。

また高圧ケーブルは高圧受電設備の中でも重要度が高く、絶縁破壊した時は長期間の停電に繋がります。停電点検時にはしっかりと劣化診断を実施して、早めに劣化の兆候を発見する必要があります。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人
じんでん

当サイトの運営者。
電気設備の保守管理の仕事に携わっています。専門知識ってネットでは出てこないか、難しすぎるって場合がおおくないですか?そこで私は電気関係の仕事で役立ちそうな情報を簡単に分かりやすく発信しています。
〔保有資格〕
・第3種電気主任技術者
・第1種電気工事士
・消防設備士

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