どうもじんでんです。今回は私史上、最大の漏れ電流値を記録した漏電調査のお話です。
様々な漏電調査を経験してきた私ですが、今回の事案は漏れ電流値もさることながら、調査に難航するポイントがありました。
知識と道具をフル活用して解決することができました。
絶縁監視装置からの警報
ある日の夜中、仲間の電気管理技術者から、絶縁監視装置の警報を受信したので代わりに対応して欲しいと依頼を受けました。困った時はお互い様ということで、快諾して現地へ向かいました。
事前の情報
現場は大きな工場で、警報の漏れ電流値は999mAとのこと。999mAと表示する場合は限界値で、1A以上の漏電が発生しているということです。
危険な状況なので、早急な対応が望まれます。
当時の天候は晴れで、何が原因だろうと様々な想定をしながら現地へ向かいました。
現地に到着
現地に到着し、漏電が発生している変圧器を特定して、リーククランプメーターでB種接地線にて漏れ電流値を測定しました。
すると「40」と表示されて、「あれ40mAなの?」「絶縁監視装置の故障?」と疑問を持ちつつ、再び測定してみました。
すると同じく「40」と表示されますが、すぐ異常に気付きました。それは40mAではなく、40Aだったのです。あまりにも大きな漏れ電流に、何度も計測値や計測場所が間違っていないか確認しました。
何度、確認しても間違いはありません。確かに40Aの漏れ電流が発生しています。これまでも数Aクラスの漏電は経験したことがありますが、40Aという数字は初めての経験で、これはヤバいと改めて認識しました。
調査開始するも難航
問題の変圧器は三相210Vのものでした。変圧器は特定できているので、ここからは回路の特定に入ります。
キュービクルの低圧盤側は比較的スペースがあったので、測定は問題なくできそうに思えました。この時までは。
電線が太くて測定できない
回路特定の為に測定を始めて、すぐに問題が発生しました。
問題の変圧器はとても大きく、容量は750kVAだったと思います。そこにぶら下がっているブレーカーは、数は大したことはありませんが、1個1個が定格電流500A〜1000Aの大きなものでした。またそこに接続される電線も、もちろん太いものでした。正確なサイズは記憶していません。
ここまでは、これまでの経験から想定の範囲内です。こんな時の為に大口径のリーククランプメーターを準備しています。
私が所持しているリーククランプメーターの中で、最大の口径はΦ100mmのものです。これまでの現場はここまで準備すれば解決できていました。
しかし今回はこれをもってしても電線が挟めません。その理由はただ電線が太いだけでなく、1相毎に2条で敷設されていたのです。計6本もの電線はさすがに挟めません。
また電線が太いので、3本ずつ測定しようにも隙間はありせん。動かそうにもびくともしません。
万事休す、どの様に対応しようか頭を悩ませました。
現場側で測定する
キュービクル側で測定できないなら、現場の盤で測定しようと考えました。
測定できない回路は3つです。それぞれの現場まで確認しに行きました。
しかし全て大型の機械の制御盤に直接配線されており、容易に電線を測定できる感じではありませんでした。
ある道具を使って回路を特定
ここまでくると危険な電流値でもあるし、ブレーカーを切って確認するのが最終手段です。しかし3回路のどれかが分かっていない状況で、稼働中の機械を止める訳にもいきません。
もう一度、頭をフル回転させて考えました。
フレキシブルのリーククランプメーターがあれば
こんな時にフレキシブルタイプのリーククランプがあれば良いのにと考えていました。フレキシブルタイプなら、この現場の状況でも電線に噛ませることができます。
私はHIOKIのクランプメーターCM3289を所持しています。
このオプションとしてフレキシブルクランプCT6280があり、それも持っています。CT6280はCM3289に接続することで、フレキシブルクランプに早変わりする優れものです。
しかしあくまでも負荷電流用で、漏れ電流の測定はできません。
しかしここで閃きます。
今の漏れ電流は40Aなので、リーククランプじゃなくクランプでも測定できるのではないだろうか。
そもそもクランプとリーククランプの違いは、漏れ電流の様な小さい電流(mA)が測れるかどうかです。大きい電流(A)なら何の問題もないはずです。
フレキシブルクランプで特定
実際に測ってみます。すると思った通り、測定できています。
不良な回路では誤差はあるものの、概ね40Aを表示しました。正常な回路では、正確ではないものの漏電は無いと判断できる数字です。総合的に考えても、1つの回路が原因であると特定できます。
これで3つの回路から、1つの不良回路を特定できました。
そこからは先方に事情を話し、原因と思われる機械を止めてもらい漏電が治まることを確認しました。詳細に調査を進めると、原因は機械内部のヒーターでした。
工場で大きな電流値の漏れ電流が発生する場合は、原因がヒーターである場合が多いですね。
経験が大事
今、この話を読んでいる人は、なぜすぐに思いつかなかったんだろうと思われるかもしれません。また危険なんだからすぐにブレーカーを切るべき、なんて意見もあるでしょう。
私も思い返せば、すぐにでも思いつきそうなものです。しかし自分が知らないことや経験していないことは、なかなか思い付かないものです。
やはり経験がものを言います。
また経験があっても、道具がなければ話になりません。しっかりと必要な道具は準備しておきたいものです。
また道具はその原理や理屈をしっかりと理解しておくことで、様々な場面で活躍するでしょう。柔軟な発想を持って考えるのも大事ですね。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
コメント
Xのリンクから来ました。
2条で敷設のイメージが掴めないのですが
ブレーカー1個に対して幹線を2本接続だと電路の保護ができないと思いますし
ブレーカー2個に対して幹線を1本つないだ上で2条に敷設であれば2条になる前に
クランプで挟むことができなかったのかと思います。
現場の状況を目でなく文字から推測するしかないので読み込めていない状態です。
石井さま
コメントありがとうございます。
表現が分かりづらく申し訳ありません。
各相毎に2条で敷設されています。よって計6本が1つのブレーカーに接続されています。
写真を添付できればいいのですが、できずに申し訳ありません。