どうもじんでんです。今回は計器用変流器(CT)に関連した内容です。高圧受電設備は、2個の計器用変流器(CT)で3相とも電流が計測できるのは不思議ですよね。ここでは、これらについて解説します。
計器用変流器(CT)とは?
高圧受電設備には、計器用変流器(CT)が設置されています。
計器用変流器(CT)は、高圧回路の電流を変流して扱いやすい低圧の電流にすることです。計器用変流器の基本についてはこちらの記事をご覧下さい。
計器用変流器の設置の目的
計器用変流器(CT)は、大きく次の2つの目的の為に設置されています。
- 高圧回路の電流の計測
- 過電流継電器(OCR)と組み合わせて短絡保護
高圧受電設備は三相交流回路です。しかし一般的な高圧受電設備では、計器用変流器(CT)は2個しか設置されていません。ですが、2個で三相の電流計測と短絡保護ができています。
これの理由についてそれぞれ解説します。
2個の計器用変流器(CT)で3相の電流が計測できる理由
計器用変流器(CT)を2個で三相の電流を計測する場合は、次のように結線されています。
計器用変流器(CT)が接続されている、R相とT相は素直にその相の電流が計測できています。では、S相の電流はどうでしょうか?
S相の電流計は、R相とT相の電流が合成されたものが流れています。これが何故、S相の電流となるのでしょうか?
これをベクトル図で考えてみましょう。
この様にR相の電流IrとT相の電流Itの合成は、S相の電流とIs同じ大きさとなります。ベクトル的に逆向きですが、電流計では大きさしか見ていないので、これで問題ありません。
また三相交流回路では、三相の和は0となり次の式が成り立ちます。
Ir+Is+It=0
-Is=Ir+It
この式からも、R相の電流とT相の電流の合成がS相の電流となることが分かります。
三相交流回路の電流の合成は、単純な足し算とはならないので注意が必要です。
ここでは各相に電流計を入れて計測しました。現実的には電流計切替器(AS)を使用して、1台の電流計しかありません。原理は同じで、これまでに説明した様に電流計の入力がなる様に切り替えられています。
2個の計器用変流器(CT)で3相の短絡保護ができる理由
短絡には、2相短絡と3相短絡があります。
3相短絡では全ての相が短絡しているので、3相全てに過電流が流れます。これにより計器用変流器(CT)が2個でも充分に検出することができます。
2相短絡は次のパターンが考えられます。
- R相-S相で短絡
- S相-T相で短絡
- T相-R相で短絡
それぞれの場合でどの相に過電流が流れて、どの計器用変流器(CT)で検出できるかを考えてみましょう。計器用変流器(CT)はR相とT相に接続されているものとします。
- R相とS相に過電流が流れる。R相のCTで検出。
- S相とT相に過電流が流れる。T相のCTで検出。
- T相とR相に過電流が流れる。R相とT相のCTで検出。
この様にどのパターンでも、過電流は1つ以上の計器用変流器(CT)を通ることとなります。
これから計器用変流器(CT)は、2個で問題ないとなります。
まとめ
- 一般的な高圧受電設備では、計器用変流器(CT)は2個しか設置されていない
- 電流計測は、2相の合成が残りの1相の電流と同じことを利用している
- 短絡保護では、どのパターンの短絡でも1つ以上の計器用変流器(CT)を通るから問題ない
計器用変流器(CT)が一般的に2個しか設置されていないのは、よく知られていることかもしれません。しかし何故、それで問題ないのかは理解できている人は少ないのではないでしょうか?特に短絡保護については、押さえておきたいポイントです。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
コメント
VTもCTも二次側配線はV結線ですよね。自身の電験三種受験はベクトル図を描かず単純に「cosπ/6≒0.866」計算式代入で合格しましたが(自爆)。
OCRの電源は電流引き外しが大勢を占め、直流トリップは公的機関や大型変電室に多くあります。コンデンサトリップは地絡継電器(GR)も一緒につく変電所が該当。私見ですが各々費用対効果を考えて設置されてます。
過電流継電器試験する側としては電流トリップが最もやりやすく、コンデンサトリップは電源逆流防止に気を使う印象です。蓄電池式はたまに充電させないと電池残量がなくなり動作しなくなるんで最近は減っていく傾向にありますよ。あと鉛蓄電池はだんだん見かけなくなってきました(リチウムイオン電池へ代替される)。
自身ホームページ持ちですが、ここに書かれている技術的なことも追記したほうがいいかもしれませんね。機会があればご覧ください。
電研鑽種さま
コメントありがとうございます。
OCRのトリップ方式は別の記事で解説しています。
良かったらそちらの記事もご覧ください。
ホームページも運営されているのですね。
拝見させて頂きます。