接地形計器用変圧器(EVT)ってなに?

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どうもじんでんです。今回は接地変圧器(EVT)の解説です。高圧受電設備では、ほとんど設置されていない機器です。あまりよく知られていない機器ですね。内容も少し難しいものとなっています。

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接地形計器用変圧器(EVT)とは?

接地形計器用変圧器は「EVT」とも呼び、「Earthed Voltage Transformer」の略称です。他にも「GPT」とも呼ばれ、「Grounding Potential Transformer」の略称です。

昔は「GPT」が一般的でしたが、近年では「EVT」が一般的です。呼び名は違いますが、機能的には同じものです。

接地形計器用変圧器(EVT)の設置の目的は、地絡保護の為です。

接地形計器用変圧器(EVT)と似た機器に零相電圧検出装置(ZPD)があります。

EVTとZPDの違いや使い分けについては、こちらの記事をご覧ください。

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用途

日本における高圧配電系統は、非接地方式を採用しています。これは地絡電流が小さいことが特徴です。非接地方式は完全に非接地ではなく、今回の接地形計器用変圧器(EVT)を介して模擬的に接地されています。

接地形計器用変圧器(EVT)の三次回路は、オープンデルタと呼ばれる結線になっています。これはデルタ回路の一端を開放しているものです。この開放端に限流抵抗を接続することで、一次側に模擬的に抵抗接地されているのこととなります。この時に接続される抵抗は一次換算で10kΩ程度です。

これにより非接地方式でも、地絡時に安定して地絡電流(零相電流)を流すことができます。また地絡時には、接地形計器用変圧器(EVT)の三次側に零相電圧が発生します。これを地絡継電器に入力して地絡保護をします。

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結線図

接地形計器用変圧器(EVT)は一次回路、二次回路、三次回路で構成されます。一次回路に対して、二次回路及び三次回路がそれぞれに対応して電圧が発生します。

接地型計器用変圧器(EVT)の結線図

二次回路は、通常の計器用変圧器と同じ働きをし、電圧計測等に利用されます。

三次回路は、零相電圧の検出に利用されます。

検出原理

まず下記の画像をご覧下さい。この画像を元に解説します。R相は赤色、S相は灰色、T相は青色、零相電圧は黒色となっています。

接地型計器用変圧器(EVT)のベクトル図

正常時の一次回路には、画像の左上の通りの電圧が印加されています。線間電圧が6600Vなので、相電圧は6600/√3Vとなります。これに対応して三次回路に電圧が発生します。ここでは変圧比は60とします。またΔ結線なので、画像の右上のようなベクトル図となります。三相平衡していれば、零相電圧は発生しません。

T相が完全一線地絡下と仮定した時が、画像の左下になります。接地点がT相に移動したことにより、R相とS相の相電圧が√3倍となり6600Vとなります。零相電圧はこの2つのベクトルの合成なので11430Vとなります。この11430Vは3V0で、V0は3810Vです。

三次回路では画像の右下のように、R相とS相に一次回路に対応して電圧が発生します。これにより完全一線地絡時には、接地形計器用変圧器(EVT)のオープンΔ回路の開放端に190Vが発生します。

この190Vが完全一線地絡時の三次回路に発生する電圧であり、3V0=190Vとなります。

注意事項

接地形計器用変圧器(EVT)にはいくつか注意しないといけないことがあります。

設置は系統に1つ

接地形計器用変圧器は、1つの系統に1つしか設置してはいけません。これは複数台を設置すると、地絡電流が分流して地絡電流の検出に支障があるからですす。

よって高圧需要家ではほとんど設置されていません。高圧配電系統では、電力会社の変電所に設置されています。

高圧需要家で設置する場合は、高圧発電機がある時です。しかしこれも商用回路に接続されない様に、高圧発電機による送電時のみ回路に接続される様に工夫が必要です。

高圧需要家で零相電圧を検出するには、零相電圧検出装置(ZPD)を使用します。

三次電圧の190Vと110V

ここまで、接地形計器用変圧器(EVT)の三次回路の開放端の電圧を190Vで説明してきました。しかし接地形計器用変圧器(EVT)の三次回路の開放端の電圧は、110V仕様の物もあります。

最近は110V仕様のものが主流です。ここでは計算しやすいように、190Vで解説しました。

絶縁抵抗測定

接地形計器用変圧器(EVT)が接続されている回路では、絶縁抵抗測定をすると0[MΩ]になってしまいます。これは絶縁抵抗計が直流電圧である為です。

測定の際は、回路から切り離しましょう。

190Vの違い

接地形計器用変圧器(EVT)の零相電圧で、190Vの値について混同することがあります。

高圧受電設備の地絡方向継電器の零相電圧の動作値は190Vです。この190VはV0の3810Vの5%で190Vです。

しかし接地形計器用変圧器(EVT)の190Vは、3V0の100%で190Vです。同じ数値で混同しないように注意しましょう。

まとめ

  • 接地形計器用変圧器は「EVT」や「GPT」と呼ぶ
  • 非接地方式の地絡保護の為に設置される
  • 三次回路のオープンデルタ回路で零相電圧を検出する

接地形計器用変圧器(EVT)は、高圧需要家ではあまり見ることがありません。しかし接地形計器用変圧器(EVT)は、地絡保護の重要な機器です。地絡電流の流れを理解するには、これの理解が不可欠です。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人
じんでん

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電気設備の保守管理の仕事に携わっています。専門知識ってネットでは出てこないか、難しすぎるって場合がおおくないですか?そこで私は電気関係の仕事で役立ちそうな情報を簡単に分かりやすく発信しています。
〔保有資格〕
・第3種電気主任技術者
・第1種電気工事士
・消防設備士

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コメント

  1. お世話になっております。
    絶縁抵抗が0[MΩ]になる理由が絶縁抵抗計が直流電圧であることは関係あるんでしょうか。
    ZPDは多重接地にはならないでしょうか。
    おかしい質問ですがご回答いただけると幸いです。

    • MASAさま
      コメントありがとうございます。

      仮に絶縁抵抗計の電圧が交流だとしても、対地間に電圧を印加すれば0MΩとなるでしょう。
      EVTでは、「絶縁抵抗測定で0MΩなのに地絡しないのか?」とよく質問されます。
      この答えを分かりやすく、絶縁抵抗計は直流電圧だからと答えています。
      厳密的には違いますが、これが分かりやすいかなと思っています。

      ZPDは中身がコンデンサとなるので多重接地とはなりません。
      理解しにくいとは思いますが、私も上記のような答えしか出てきません。

      以上、回答となります。よろしくお願いします。

  2. ありがとうございました。
    EVT,ZPDの違い解説されていたのですね。
    他も勉強させていただきます。

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