どうもじんでんです。保安管理業務委託承認制度では、複数の自家用電気工作物を1人の電気主任技術者の資格を持った者で管理できます。しかし複数の事業場を管理できても、その数は無限ではありません。この制度の特徴からその数に上限を設けて、どの事業場も均等に管理できる様に規制されています。
そのポイントとなるのが換算係数です。今回はこの換算係数について解説します。
保安管理業務外部委託承認制度とは?
自家用電気工作物を設置する者は、電気主任技術者を選任することになっています。しかし電気主任技術者は誰でもなれる訳ではありません。様々な条件があり、かなりハードルが高いものとなっています。
これは小規模な自家用電気工作物を設置する者にとって、大きな負担となってしまいます。
そこで保安管理業務を外部委託する事で、電気主任技術者の選任をしなくてもいい制度があります。これが保安管理業務外部委託承認制度です。全ての自家用電気工作物に適用できる訳ではありませんが、多くの自家用電気工作物はこの制度を活用しています。
保安管理業務外部委託承認制度について詳しくは、こちらの記事をご覧下さい。
換算係数とは?
保安管理業務外部委託承認制度において、1人が保安管理業務を実施できる事業場の数に制限を設けています。
これは1人で無制限に保安管理業務を実施すると、1事業場への充分な保安管理ができないからです。そもそも保安管理業務とは、「工事、維持及び運用に関する保安の監督に関わる業務」となっています。よって法律で制限している訳です。
その値は、1人あたり33未満と決められています。
しかしこれは33事業場という訳ではありません。自家用電気工作物は、大規模な物から小規模な物まで様々です。これらの保安管理に必要な業務量は一律でしょうか? 当然、大規模な自家用電気工作物の方が、業務量は多いと言えます。
そこで需要設備の設備容量や、発電所の出力に応じて換算係数を定めて、均等になるようにしています。設備容量とは、変圧器の容量を指します。
1つの事業場の値を1として、換算係数を乗じた値を換算値と言います。
小さい規模なら小さい値で、大きい規模なら大きい値となります。この換算値の合計が33未満と決められています。
この換算値を点数と呼ぶこともあります。
換算係数一覧
換算係数を一覧にまとめました。
ここで記載している換算係数については、平成十五年経済産業省告示第249号の令和4年11月30日改正分をまとめています。今後、改正があれば早めに更新する予定ですが、参照される際は最新か確認をお願いします。
発電所
出力 | 換算係数 |
---|---|
100kW未満 | 0.3 |
100kW以上300kW未満 | 0.4 |
300kW以上600kW未満 | 0.6 |
600kW以上1000kW未満 | 0.8 |
1000kW以上1500kW未満 | 1.0 |
1500kW以上2000kW未満 | 1.2 |
2000kW以上2500kW未満 | 1.4 |
2500kW以上3500kW未満 | 1.6 |
3500kW以上5000kW未満 | 1.8 |
蓄電所
出力 | 換算係数 |
---|---|
100kW未満 | 0.3 |
100kW以上300kW未満 | 0.4 |
300kW以上600kW未満 | 0.6 |
600kW以上1000kW未満 | 0.8 |
1000kW以上1500kW未満 | 1.0 |
1500kW以上2000kW未満 | 1.2 |
2000kW以上2500kW未満 | 1.4 |
2500kW以上3500kW未満 | 1.6 |
3500kW以上5000kW未満 | 1.8 |
需要設備
設備容量 | 換算係数 |
---|---|
低圧 | 0.3 |
64kVA未満(小規模高圧需要設備) | 0.2 |
64kVA未満 | 0.4 |
64kVA以上150kVA未満 | 0.6 |
150kVA以上350kVA未満 | 0.8 |
350kVA以上550kVA未満 | 1.0 |
550kVA以上750kVA未満 | 1.2 |
750kVA以上1000kVA未満 | 1.4 |
1000kVA以上1300kVA未満 | 1.6 |
1300kVA以上1650kVA未満 | 1.8 |
1650kVA以上2000kVA未満 | 2.0 |
2000kVA以上2700kVA未満 | 2.2 |
2700kVA以上4000kVA未満 | 2.4 |
4000kVA以上6000kVA未満 | 2.6 |
6000kVA以上8800kVA未満 | 2.8 |
8800kVA以上 | 3.0 |
配電線路を管理する事業場
事業場 | 換算係数 |
---|---|
配電線路を管理する事業場 | 0.1 |
換算係数の特例
換算係数は基本的に前述の一覧の通りですが、一部の条件に適合すれば更に小さな換算値となります。
小規模高圧需要設備
需要設備では、下記の条件を満たすものを小規模高圧需要設備と呼びます。
- 設備容量が64kVA未満
- 非常用予備発電装置を設置していないこと
小規模高圧需要設備は、10以内の事業場の換算値を合計から控除する事ができます。
簡単に説明すると、小規模高圧需要設備に該当する事業場は10軒までは換算値が0という事です。11件目からは換算係数が0.2となります。
隔月点検が可能な需要設備
経済産業省告示第249号の第4条第7号及び第8号にて定められている、点検頻度が隔月1回以上に該当する需要設備については、換算係数を更に0.6乗じます。
ただし小規模高圧需要設備は対象外です。
3ヶ月1回点検が可能な需要設備
経済産業省告示第249号の第4条第9号にて定められている、点検頻度が3ヶ月1回以上に該当する需要設備については、換算係数を更に0.45乗じます。
ただし小規模高圧需要設備は対象外です。
太陽電池発電所及び蓄電所
太陽電池発電所及び蓄電所については、条件によって換算係数を更に乗じます。詳しくは下記を参照下さい。
- 経済産業省告示第249号の「第4条第4号の2のイ」又は「第4条第4号の3のイ」の設備を有する場合は0.32乗じます。
- 経済産業省告示第249号の「第4条第4号の2のロ」又は「第4条第4号の3のロ」の設備を有する場合は0.31乗じます。
- 経済産業省告示第249号の「第4条第4号の2のハ」の設備を有する場合は0.33乗じます。
- 経済産業省告示第249号の「第4条第4号の3のハ」の設備を有する場合は0.32乗じます。
- 経済産業省告示第249号の「第4条第4号の2のニ」の設備を有する場合は0.36乗じます。
- 経済産業省告示第249号の「第4条第4号の3のニ」の設備を有する場合は0.33乗じます。
- 1~6以外は0.25乗じます。
火力発電所
経済産業省告示第249号の第4条第2号の2本文に該当する火力発電所については、換算係数を更に0.45乗じます。
また経済産業省告示第249号の第4条第2号の2のただし書きに該当する火力発電所については、換算係数を更に0.25乗じます。
まとめ
- 保安管理業務外部委託承認制度では、1人あたりが実施できる事業場の数を制限している
- 設備容量などにより換算係数が決まっている
- 1事業場に換算係数を乗じた値を換算値という
- 換算値を合計したものが1人あたり33未満であること
保安管理業務外部委託承認制度において、換算係数はとても重要な項目です。
換算値の合計は33未満と決められているので、絶対にこの値を超えることはできません。設備が増設になると、換算係数も変わるので注意が必要です。
また条件により変わったりもするので、非常に複雑で分かりにくいですね。しっかりと理解して管理しましょう。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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