零相電圧検出器(ZPD)ってなに?

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どうもじんでんです。今回は零相電圧検出装置(ZPD)について記事にしました。

小規模の受電設備では単体で設置されておらず、よくわからないという方も多いかと思います。しかし太陽光発電設備の普及により、見かける事も多くなりました。

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零相電圧検出装置(ZPD)とは?

零相電圧検出装置とはZPDと言い「Zero-Phase Potential Device」の略称です。

零相電圧検出装置は他にも「零相電圧検出器」、「零相蓄電器」、「ZPC」「ZVT」などと呼ばれる事もあります。しかしZPDが一般的かと思います。JISなど色々な規格を調べましたが、これが正解と言うものに辿り着けませんでした。もし情報をお持ちの方はコメントをお願いします。

この記事では「ZPD」で呼んでいきます。

零相電圧検出装置(ZPD)と似た機器に接地形計器用変圧器(EVT)があります。

ZPDとEVTの違いや使い分けについては、こちらの記事をご覧ください。

ZPDの文字記号及び図記号

零相電圧検出装置(ZPD)の文字記号及び図記号は次の通りです。

零相電圧検出装置(ZPD)の文字記号と図記号

ZPDのメーカー

零相電圧検出装置(ZPD)を発売しているメーカーをまとめました。

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ZPDの設置の目的

ZPDは零相電圧を検出する役割で設置されます。零相電圧は地絡方向継電器の検出要素の1つで、普通の高圧受電の需要家であればPASに内蔵されています。

地絡が発生すると、零相電圧が発生します。この零相電圧を検出するのがZPDの役割です。ZPDは検出した零相電圧を内蔵のコンデンサにより分圧し、また変圧器で扱いやすい電圧に変換します。変換した零相電圧は、保護継電器などに入力して利用します。

零相電圧を必要とする保護継電器には、地絡方向継電器(DGR)や地絡過電圧継電器(OVGR)が挙げられます。

地絡方向継電器(DGR)の詳細は、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。

地絡過電圧継電器(OVGR)の詳細は、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。

PASに付属しているSOG制御装置が方向性だった場合は、PASの中にZPDが設置されています。

またサブ変電所があり、メインの変電所からの送り出しに地絡方向継電器(DGR)が設置されている場合にも設置されます。PASとは別に、受電所で地絡方向継電器(DGR)が設置されているなら間違いなく設置されています。

また最近よく見られるメガソーラーと言われる、太陽光発電所にも必ず設置されています。これは地絡方向継電器(DGR)の為ではなく、地絡過電圧継電器(OVGR)の為に設置されています。

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ZPDの外観と結線図

ZPDの外観は次のような感じで、高圧回路に接続する本体と電圧の変換などを行う箱の2つに分けられます。

ZPDの外観

本体はキュービクル内等で、高圧母線等の支持に使われる「エポキシ樹脂碍子」にそっくりの形をしています。3本一組で使用し、各相に 1つずつ設置します。

赤い部分はキャップで保護カバーになっており、内部には挟み込み式の金具がついています。高圧回路のKIP電線などを被覆を剥いた状態で、この挟み込み式の金具で固定することで接続となります。

電線の支持に使うエポキシ樹脂碍子と似ているので、稀に被覆を剥かずに挟み込んでいる事例があります。これでは何の意味もないので注意しましょう。

エポキシ樹脂碍子は電線の支持が目的なので、絶縁被覆を剥く必要はありません。しかしZPDは電気的に接続されている必要があります。

ZPDの結線図

ZPDの結線図は次のようになっています。

ZPDの回路図

各相コンデンサ(Cr、Cs、Ct)の容量は製品によっても違いますが、一例だと250pFとなっています。対して検出用コンデンサ(Cg)は0.15pF程度となっています。※あくまでも一例です。

ZPDの検出原理

ZPDは先程の回路構成の様に、コンデンサによって地絡電圧を検出します。

また零相電圧は最大で3810Vになるので、継電器などで扱い易くする為に小さい電圧に変換します。これは計器用変圧器(VT)や計器用変流器(CT)と同じ考え方です。

地絡時の各部の電圧

それでは実際に地絡が発生した時に、各部にどの様な電圧が発生するのかについて考えましょう。

通常時(三相対称交流)は零相電圧は発生しません。

まずは完全一線地絡時にかかる電圧について表したのが次の図です。

ZPDの完全一線地絡時の各部の電圧

この図ではS相が完全地絡しているものとします。

これをベクトル図に表すと次のようになります。

ZPDの完全一線地絡時のベクトル図

これは大雑把に言えば、完全一線地絡時の零相電圧の考え方と同じになります。地絡時は3V0=11430Vが発生します。

零相電圧の考え方について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

違うのは直列接続されたコンデンサによって分圧される点です。

完全一線地絡時に零相電圧(11430V)が発生します。しかしこれは各相コンデンサと検出用コンデンサで分圧されます。各相コンデンサ(Cr、Cs、Ct)と検出用コンデンサ(Cg)の容量の比率で、検出用コンデンサ(Cg)には数十V程度の電圧しかかかりません。

検出用コンデンサ(Cg)にかかる電圧(Vcg)を、さらに変圧器で小さくしたものが「Y1-Y2」間に発生します。この変圧器は、絶縁の為と継電器入力を小さくする為と考えて下さい。

ZPDの施工のポイント

ZPDを施工するにあたりいくつかのポイントがあります。

ZPDの選定

ZPDを選ぶにあたって大事なポイントがあります。それは保護継電器との組み合わせです。

ZPDは各機種毎に、組み合わせが可能な保護継電器が決められています。これはメーカーが違えばもちろん組み合わせ不可ですが、同じメーカーでも種類や年代によっては組み合わせができません。

これはZPDのY1・Y2端子から出力される電圧に違いがあるからです。検出原理で説明しましたが、ZPDは零相電圧をコンデンサで分圧し、変圧器で変換しています。各コンデンサ容量、検出コンデンサ容量、変圧器の巻線比などが各機種で違うので、出力電圧が違ってきます。

新設時はあまり問題とならないかと思いますが、故障による取替時は注意が必要です。ZPD若しくは保護継電器の故障による取替えの時は、必ず組み合わせを確認しましょう。古い製品の場合は、組み合わせ出来るものが存在せずに一式交換が必要となる場合もあります。

ZPDの設置場所

零相電圧が発生すると、繋がっている回路全体に発生します。よってZPDはどこに設置しても、問題なく検出できます。この特性から、1台のZPD出力から複数の保護継電器へ入力しています。

よって特定の回路の遮断時に、ZPDが回路から切り離されないように設置しなければなりません。主幹の遮断器一次側や、母線に設置することが多いです。分岐の遮断器二次側などへの設置は不適切です。

ZPDに保護継電器を接続する台数の制限

先ほどの説明の通り、1台のZPD出力から複数の保護継電器へ入力して利用する場合があります。この時に接続できる保護継電器の台数には、制限があるので注意が必要です。

また保護継電器の種類や機種によって、接続できる台数は多く違ってきます。各製品の取扱説明書を確認しましょう。

誤って制限を超えて接続すると、感度の低下や不動作など正常な動作ができません。

ZPDの配線

ここからは配線に関するポイントです。

N端子間は専用線を使用

本体と変換器のN端子を接続する線は、専用線を使用しましょう。基本は付属するものを使用します。設置場所により長さが足りない場合は、メーカーによっては長いタイプも用意されていますので確認しましょう。

長さが足りないからと、市販の電線での接続はダメです。誤動作の原因となります。

Y1・Y2からの配線はシールド線を使用

ZPDのY1・Y2出力から保護継電器までの配線は、シールド線を使用しましょう。Y1・Y2間の電圧は非常に小さいので、誘導などにより誤動作する恐れがあります。

またこの配線は、可能な限り短く配線するようにしましょう。長くなると誘導を受けるリスクが高くなります。

このシールド線の接地は、1点接地となるように接続します。2点接地となると、迷走電流などにより、誤動作する可能性があります。

周波数による違い

ZPDのY1・Y2端子は、周波数(50㎐ or 60㎐)によって切り替えが必要となるので注意が必要です。

切替方法も製品によって違いますが、それぞれ用の接続端子があるものや、短絡片の接続で変わるものなどがあります。

接地

ZPDには接地する箇所が複数あります。また箇所によって設置の種別が変わるので注意が必要です。

まず検出器のE端子は、A種接地が必要です。これは高圧回路の接地側なのでA種となっています。

次にY2からの配線にはD種接地が必要です。Y2端子の接地は1点接地となるようにしましょう。2点接地となると、迷走電流などにより、誤動作する可能性があります。

ZPDの試験時の注意事項

ZPDの試験時に注意するポイントがあります。

ZPDの絶縁耐力試験時の注意

ZPDの絶縁耐力試験時には、Y1・Y2端子の養生が必要です。養生の方法は、メーカーや製品によっても違いますが、次の2通りの方法があります。

  1. Y1・Y2端子間を短絡する
  2. Y1・Y2に接続される保護継電器を切り離す

どちらも接続される保護継電器に、過電圧が印加されて焼損することを防ぐ為です。

絶縁耐力試験では、対地間に10350Vを印加します。これは完全一線地絡時の電圧より大きいので、保護継電器の入力電圧も想定以上となります。

保護継電器試験時のZPDの注意事項

ZPDと組み合わせる保護継電器の試験では、ZPDに電圧を印加します。この時の注意事項についてまとめます。

試験時の電圧の印加方法

保護継電器試験において、ZPDに電圧を印加する方法は2通りあります。

  • ZPD一次側を短絡して電圧を印加する
  • 試験端子「T-E」間に印加する
ZPD一次側を短絡での試験

ZPDに試験電圧を印加する場合は、一次側を短絡して対地間に電圧を印加します。

各相を短絡することにより、コンデンサの並列回路を作っています。コンデンサの並列回路では、単純に足し算をすることで1つのコンデンサに変換できます。

これにより地絡時の電圧を模擬的に再現しています。

試験端子での試験

試験端子での試験について解説します。試験端子に印加した時は、下記の図の通りとなります。

ZPDの試験端子の電圧のかかり方

試験端子「T-E」に試験電圧を印加すると、試験用コンデンサ(Ctt)と検出用コンデンサ(Cg)の直列回路に電圧が印加されます。

この試験用コンデンサ(Ctt)の容量は、各相コンデンサ(Cr、Cs、Ct)の合算値になります。

各相コンデンサは並列接続の為、合算値は各容量の足し算となります。Cr、Cs、Ctは同容量なのでC0とすると次の式が成立します。

Cr=Cs=Ct=C0

Ctt=3C0

これにより各相に等しく零相電圧(Vo)を印加したのと同等になることがわかるかと思います。

しかしメーカーや製品によっては、Cttの容量を調整して試験電圧を低くしているものがあります。特に三菱電機のものは、試験電圧が1/10となるので注意が必要です。試験端子からの試験では、印加する電圧に注意しましょう。

どちらの試験方法が望ましい?

先の項目で、ZPDの試験で2通りの方法があることがわかりました。ではどちらの試験方法がいいのでしょうか。

試験端子「T-E」間では本来の回路に電圧が印加されていないので、ZPD本体の正常性は確認できません。なのでどちらがいいかというと一次側を短絡させての試験が望ましいです。

しかしZPDの一次側に電圧を印加すると感電の恐れなどから、回路から切り離して試験しなければいけない場合もあり試験に時間を要します。

PAS内蔵など試験が難しい場合や、停電時間が時間が限られるなどの場合は試験端子を使うと良いでしょう。または数年に一度は一次側短絡で試験するのもいいかもしれません。

三菱電機製のZPDは試験電圧が1/10

三菱電機製のZPDのMPD-3を試験端子「T-E」にて試験する場合は、入力電圧が1/10でいいので注意しましょう。

5%であれば通常は約190Vですが、MPD-3は1/10の約19Vで動作します。他のZPDの通りに電圧を印加すると、過電圧となり故障の原因となる可能性があります。MPD-3の試験端子T-Eに入力できる最大電圧は380Vとなっています。

これは前述した試験用コンデンサCttの容量を調整して、試験電圧を低くしているためです。

MPD-3も試験端子は1/10ですが、一次側を短絡して試験する場合は通常の値となります。

まとめ

  • 零相電圧検出器はZPDやZPCやZVTとも呼ぶ
  • 零相電圧を検出するためのもの
  • 地絡方向継電器や地絡過電圧継電器と併せて設置される
  • コンデンサによって分圧し、扱い易い電圧に変換する
  • 2通りの試験方法がある

ZPDは単体で設置されていることも少なく、あまり扱わない機器です。しかしPASには内蔵されており、地絡方向継電器の重要な一部とも言えるものなのできちんと理解しておきたいものです。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人
じんでん

当サイトの運営者。
電気設備の保守管理の仕事に携わっています。専門知識ってネットでは出てこないか、難しすぎるって場合がおおくないですか?そこで私は電気関係の仕事で役立ちそうな情報を簡単に分かりやすく発信しています。
〔保有資格〕
・第3種電気主任技術者
・第1種電気工事士
・消防設備士

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コメント

  1. 一線地絡の場合は3倍ではなく√3倍ではないですか?

    • みのるさま
      コメントありがとうございます。
      返信が遅くなり申し訳ございません。
      相電圧(6600V)で考えると、仰る通り√3倍となります。
      この記事では、V0(3810V)を基準で説明していますので、3倍としています。
      分かりづらく申し訳ございません。
      よろしくお願い致します。

  2. ZPDの耐圧試験方法を教えてください。どの様な配線でどの部分に10350V印加すればよいか。

    三相短絡など、具体的に教えてください。

    • てつおさま
      コメントありがとうございます。
      ZPDの絶縁耐力試験は、下記の通り実施します。
      ・二次側のY1、Y2の配線を外し、ZPD側のY1、Y2端子を短絡して接地する
      ・一次側を三相短絡させ、一か所に電圧を印加する。
      一般的には上記の対処で大丈夫かと思いますが、念のためメーカーに確認することをお勧めします。
      以上、よろしくお願い致します。

      • ご連絡ありがとうございました。

        確認ですが、ZPD側のY1,Y2とはコンデンサのN端子でこの部分を三相短絡して

        接地する。と言うことでよろしいでしょうか?

        • N端子ではないです。
          ZPDの機種にもよりますが、三菱とかだとZPDに付属して黒い箱がついているかと思います。
          これもZPDの一部です。
          この箱にY1、Y2端子があるので、そこで短絡して接地します。

  3. 質問です。ZPD内部には通常のコンデンサーのように絶縁油を入れていますか? 
    若し、そうであれば古いものは更新してPCB含有分析をする必要があろうかと思います。
    コメントではなくて申し訳ありませんが、貴方は随分詳しくご存じなので構造にも明るい方とお見受けし、質問させていただきました。
    お答えを宜しくお願い致します。   
    出来ればメールに返信いただきたいです。

    幸酔

    • 幸酔さま
      コメントありがとうございます。

      ご希望の通り、メールにて回答をお送りしました。
      ご確認をお願いします。
      届いていない等あればコメント頂けると助かります。

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