どうもじんでんです。今回はある需要家で起こった漏電についてお話しします。
今回の現場は広大な敷地を有している需要家でした。高圧で受電して、低圧で各建屋に電柱を介して架空電線路で送電していました。
この需要家で漏電が発生しているとのことで、現場に向かいました。受電所の変圧器のB種接地にて確認すると、確かに3A程度の漏電が発生していました。
受電所内の送り出しのブレーカーで回路を特定でき、幸いにも一箇所にしか送電しておらず簡単に特定のできるとこの時は思っていました。
いざ現場へ!簡単に特定できると思っていたのに…
対象の建屋に到着し主幹ブレーカーにて漏電を確認すると、なんと全く漏電していませんでした。
この時の可能性として次のものがあります。
- 図面の間違いで送電先の建屋を間違えた。
- 増設で他の建屋にも送電している。
- 幹線にて漏電している。
これらの可能性を1つずつ確認しなければなりません。
図面の間違いで送電先の建屋を間違えた
これについては簡単に確認できます。
受電所のブレーカーの入切で確認できます。電話などで連絡をしながら、検電器やテスターでの電圧測定にて電圧の有無を確認することで特定可能です。
受電所のブレーカーの入切で、建屋の主幹ブレーカーでも電圧の有無が変化したので間違いはありませんでした。
この可能性は0となりました。
増設で他の建屋にも送電している
これについては架空電線路だったので、簡単に確認することができました。
方法は目視で電線路を確認し、途中で分岐がされていないかを確認します。もし地中埋設の電線路だった場合は、この方法は使えません。他の方法ならブレーカーを切った状態で、他に停電している場所がないかを確認するなんかがあります。
目視にて確認すると、分岐しているような場所はなく間違いないだろうと思いました。しかし電柱の上でのことなので、100%の自信はありませんでした。
この可能性は20%といったところでしょうか。
幹線にて漏電している
他の2つの可能性が低くなった今、この可能性が一番高くなりました。架空電線路なので、どこかしらの電柱にて被覆の劣化や損傷しているのだと判断しました。
しかし対象の架空電線路には電柱が10本あり、もちろん高所作業車はなく調査は体力勝負です。一本ずつ昇って目視確認しても確実に漏電点を見つけることは至難の技です。
確実に見つけるには、10本ある電柱から「この電柱だ!」と1本を特定しないといけません。
漏電している電柱を特定する
漏電箇所を特定するには電柱に登り、漏れ電流を測定することで特定できます。漏電点以降の箇所では漏れ電流がでないので、電柱上で電源側と負荷側を測定すれば漏電点を絞ることができます。
もし電源側・負荷側共に漏れ電流があれば、その点より負荷側に漏電点があるということになります。
もし電源側・負荷側共に漏れ電流がなければ、その点より電源側に漏電点があるということになります。
もし電源側にて漏れ電流があり、負荷側では漏れ電流がない場合はその点が漏電点の可能性が高いことになります。
この方法で特定する時のポイントは、電柱上で測定する箇所はなるべく電柱より遠い所で測定することです。電柱に近い所だと漏電点であっても、負荷側で漏れ電流がある場合があり誤解に繋がります。
この方法は漏れ電流を測定できることが条件となります。なので基本は3本の線を一括で測定する必要があります。なのでよく架空配線に利用されるOWでは、1相ずつが離れており漏れ電流の測定が困難です。
漏れ電流の大きさに目を向ける!
今回の現場もOWで架空配線されており、先ほどの方法が使用できないと思っていました。しかし全部の電柱に昇るのは大変だし、確実に特定できるかわかりません。
頭をフル回転しある事に気付きました!
今回の漏電は…
- 幹線で起きている
- 漏れ電流は3Aと大きい
- 現場側が特定できている
これらよりある仮説が立てられます。
幹線で一線地絡が起きており、漏れ電流の3Aは地絡している相に全て流れているのではないか?
これを確かめる為に送電先の主幹ブレーカーを切り無負荷にして、受電所の送り出しブレーカーで各相の電流を測定しました。
思った通り「赤相3A・白相0A・青相0A」でした。これが何を意味しているかというと、「漏れ電流は三相一括で測定する必要はない!赤相だけ測定できれば同じ事!」という事になります。
これで少ない昇柱で漏電点を特定できます。
いざ電柱の特定へ!
こういう時の特定は真ん中で測定して半分に絞り、その繰り返しで特定していくのが定石です。
とりあえず10本ある電柱の真ん中の電源側より6本目の電柱で測定しました。電源側・負荷側共に漏電はありません。なのでこれより電源側の電柱だという事です。
次に残る5本の電柱の電源側より3本目にて測定します。電源側で漏電あり、負荷側で漏電なしです。
ココです!
運良く2本目で特定する事ができました。
入念に目視点検!
電柱が特定できれば、あとは目視による漏電点の特定です。ぱっと見はどこも地絡しているようには見えませんでした。しかし絶対にここのどこかで漏電しているはずです。
ありました!電線が傷つき引っ張られて、腕金の金属部に僅かに食い込み接触していました。
言葉だけで見れば直ぐに見つかりそうなものですが、現場では本当に見つけにくいものでした。写真がないのが残念です。
処置をして仮復旧
とりあえず傷ついた部分を何重にもテーピングして仮復旧としました。
送電後に漏れ電流を測定すると1mAで異常ありません。
今回の処置は手持ちのものでの簡易処置です。なので後日、電気工事屋さんに綺麗に補修してもらうように依頼して作業完了です。
今回のポイント
- 幹線の漏電と特定できた
- 一線地絡なら漏れ電流は一相のみに流れる
- 電柱を特定してから、漏電点を探した
今回のような場合、人によっては全部の電柱に人海戦術で昇り特定するという事もあるかもしれません。一目で分かるような地絡なら良いのですが、分かりにくい地絡は本当に探すのが困難です。ここなのかどうかも分からない状態で探しても、見逃す可能性も大きいでしょう。特に電柱の上での作業なので余計にです。
電気事故はひとつひとつの状況が全く一緒ということはありません。
クランプメーターを使った漏電調査の方法はこちらの記事で解説しています。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
コメント