どうもじんでんです。今回は高圧ケーブルの充電電流の算出についてお話したいと思います。
当ブログでは、絶縁耐力試験時の高圧ケーブルの充電電流計算ツールを公開しています。
これを使えば簡単に充電電流を算出できます。この記事では、その根拠となる計算について詳しく書きたいと思います。
充電電流とは?
高圧受電設備の竣工検査では絶縁耐力試験が必要になります。絶縁耐力試験の基本については、こちらの記事を参照下さい。
その中で重要な要素として充電電流があります。絶縁耐力試験の試験器には最大の容量があり、それを超えて試験することはできません。その容量はkVAで表し、試験電圧×充電電流になります。
試験電圧は6.6kV回路であれば10350Vであり、基本的には一定です。なので容量は充電電流に左右されます。
高圧受電設備の機器の中で、最も充電電流が大きいのが高圧ケーブルになります。
他の機器の充電電流についてはこちらの記事を参照下さい。
高圧ケーブルの静電容量
充電電流は各機器の対地静電容量によって発生します。高圧ケーブルのメーカーはカタログ等で静電容量を記載しています。
またJISでも静電容量が参考値として記載されています。JISに適合している高圧ケーブルであれば殆ど同じになると思います。
今回もこのJISに記載の静電容量を使います。これを用いて計算することで、充電電流を算出することができます。
計算方法
今回知りたいのは充電電流と言うことで、求めるのは電流になります。
オームの法則より電流Iは次の式で求められます。
I=V/Ω
次に抵抗[Ω]について考えます。ここで関係する抵抗は静電容量のC[μF]分だけです。しかしC[μF]のままでは単位が違うので使えません。変換が必要になります。
C[μF]→Xc[Ω]にするには次の式を使います。
Xc=1/(ωC)=1/(2πfC)
f[Hz]は周波数です。
ここまでの式を用いると次のようになります。
I=V/Xc=V/(1/(2πfC))=V×2πfC=2πfCV
最終的に「I=2πfCV」となります。
実際に計算しよう
先程の式を使って実際に計算します。各項目は次のように代入します。
- V=試験電圧なので10350[V]
- f=電源周波数なので、地域によって50[Hz]or60[Hz]
- C=高圧ケーブルの静電容量[μF]
ここで高圧ケーブルの静電容量[μF]について注意点があります。高圧ケーブルの仕様には、静電容量は「μF/km」で表されています。これは1kmあたりの静電容量[μF]と言うことです。なので実際の長さに合わせて、計算しておかないといけません。
ここでは仮に38m㎡の50mとします。38m㎡の静電容量は0.32[μF/km]です。50mに換算すると0.016[μF]になります。
またこれは1相分でしかありません。高圧ケーブルであれば、基本は3相なので3倍にしないといけません。
なので0.016×3で0.048[μF]になります。
これまでの数値を代入すると
2×3.14×60×0.048[μ]×10350=187[mA]
これで38m㎡の高圧ケーブル50mの充電電流は187[mA]となります。
※電源周波数は60[Hz]での計算です。
まとめ
- 高圧ケーブルの静電容量から算出する
- 仕様の静電容量は1相分なので3相なら3倍
- 仕様の静電容量は[μF/km]なので実際の長さで換算する
当ブログで公開しているツールを使えば、今回の計算などせずに簡単に充電電流を算出できます。しかしどのように算出しているかは、ぜひとも知っていてもらいたいです。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
コメント