どうもじんでんです。今回はSOG制御装置について記事にしました。SOGは高圧受電設備には無くてはならない保護装置です。しかし意外と正しく理解されていないこともあります。特にSO要素については、特殊な動作なのでぜひ理解しておきたいものです。
SOG制御装置とは?
SOG制御装置とは、高圧受電設備の責任分界点に設置されるPASにセットで付いている保護継電器です。SOGは「Storage Over Current Ground」の略称です。
「Storage Over Current」は日本語で表現すると「蓄勢+過電流」となります。
「Ground」は「地絡継電器(GR)」を表しています。
この2つの機能を併せ持ったものをSOG制御装置と呼びます。
SOG制御装置は、高圧需要家の保護装置の最後の砦ともいえるものです。これが正常に動作すれば、高圧需要家内のどんな電気事故も波及事故になりません。
SOG制御装置を併せて設置されるPASについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
SOG制御装置を構成する要素
SOG制御装置は高圧受電設備の重要な保護装置として、2つの要素を持っています。
SO要素
1つ目が「SO」要素です。「Storage Over Current」の略称で、「蓄勢過電流」の意味があります。名前の通り過電流で動作します。
高圧受電設備は一般的に、PAS〜高圧ケーブル〜VCB〜高圧機器と繋がっています。VCBより下位で短絡すれば、VCBと過電流継電器(OCR)により保護が可能です。しかしVCBより上位で短絡するとどうなるでしょう。それを保護するのが今回のSOG制御装置によっておこなわれます。※LBSタイプの受電設備でも同じです。
SOG制御装置は動作するとPASを開放します。しかしPASは開閉器であり、遮断器ではありません。なので短絡電流のような大電流は開放する事ができません。その為にSOの動作時には特殊な動作をします。
まずPAS内蔵のCTにて過電流を検知すると、開放しない様にロックします。この時に地絡を同時に検知しても、ロックされているので開放されません。
過電流により、さらに上位の電力会社の変電所の遮断器が遮断します。これにより過電流が無くなると共に、無電圧になります。この「無電圧」+「過電流の無くなり」を検知すると、SOが動作しPASを開放します。
簡潔に説明すると次の様になります。
- 短絡が発生
- PASが過電流を検知してロック
- 電力会社の遮断器が遮断して停電
- PASが「無電圧」と「過電流の無くなり」を検知
- SO動作にてPASを開放
- 電力会社は順次送電される
SO動作の流れについて、動画でも解説しています。併せて見るとより理解できると思います。
GR要素
もう1つの要素が「GR」要素です。これについては、通常の地絡継電器と同じです。地絡を検知して動作します。
大きく分けて、無方向性地絡継電器(GR)と方向性地絡継電器(DGR)があります。
地絡継電器(GR)について詳しくは、こちらの記事を参照下さい。
整定値
SOG制御装置には3つの整定値があります。
- 動作電流
- 動作電圧 ※無方向性の場合は対象外
- 動作時間
各項目について詳しく解説していきます。
この整定値は、どれも地絡継電器(GR)要素に関係するものです。よって考え方は地絡継電器(GR)と同じです。SO要素についてはその特性から整定の項目はありません。
またSOG制御装置は、需要家の責任分界点の保護装置なので、電力会社の変電所との保護協調が大事となってきます。
動作電流
動作電流は、地絡電流の検出する大きさを決めます。地絡電流が、ここで設定した値を超えた時にGR要素が動作します。
電力会社の変電所の整定値より、低く設定する必要があります。概ね「0.2A」に設定されることが多いです。
無方向性の場合はあまり低い値に設定すると、もらい事故の可能性が高まるので注意しましょう。
動作電圧
動作電圧は、地絡電圧の検出する大きさを決めます。地絡電圧が、ここで設定した値を超えた時に検知します。
動作電圧は、方向性の場合にのみ設定する必要があります。
また地絡電圧が整定値を超えた場合に動作するのではなく、地絡電圧と地絡電流が共に整定値を超え、さらに位相が範囲内でなければ動作しません。
電力会社の変電所の整定値より、低く設定する必要があります。概ね「5%」に設定されることが多いです。
動作電圧は、その特性から単位は「V」ではなく「%」となっているので注意しましょう。
動作時間
動作時間は、地絡電流と地絡電圧が共に整定値を超え条件が揃った場合に、どのくらいの時間で動作するかを決めるものです。
電力会社の変電所の整定値より、早く設定する必要があります。概ね「0.2秒」に設定されることが多いです。
PASとSOG制御装置の回路図
PASとSOG制御装置の回路図と配線です。
この図は、方向性でVT及びLA内蔵タイプです。他のタイプでは不要な分をないものとして考えて下さい。
トリップ回路について解説します。
PAS内のCTが過電流を検出すると、矢印の先の接点が動きます。これによりVbとVcが短絡状態となり、SOG制御装置は過電流状態であると認識します。
通常時はSOG制御装置が地絡と判断し開放するときは、VaとVc間に電圧を発生してトリップコイルを励磁させます。これにより開放されます。
注意事項
SOG制御装置に関する注意事項についてまとめました。
波及事故じゃないの?
SOG制御装置のSO動作時に電力会社の遮断器が切れる事で、付近一帯が停電します。
これは「波及事故のじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。しかしSO動作の為の1回の停電は、波及事故に該当しません。
波及事故について詳しくは、こちらの記事を参照下さい。
Z2端子の接地は不要
SOG制御装置のZ2回路は、接地されている必要があります。
昔のSOG制御装置では、SOG制御装置側のZ2端子にて接地を接続していました。しかし現在のSOG制御装置では、PAS内部にてZ2が接地されています。PAS本体が接地されていれば、自ずとZ2も接地されます。
よってSOG制御装置側のZ2端子は接地不要となっています。
もしZ2端子を接地してしまうと2点接地となり、SOG制御装置の不必要動作に繋がる可能性があります。
昔のままの認識で、Z2端子を接地する誤った工事を見かける事があります。取扱説明書を確認して正しい施工に戻しましょう。
※現在は接地不要ですが、製造年や型式によって必要の可否が変わります。よく確認しましょう。
まとめ
- SOG制御装置はPASとセットで設置される保護継電器
- 「SO」と「GR」要素で構成される
- SO要素は過電流保護の為の要素
- PASは大電流を開放できない
- SO動作では電力会社の遮断器が切れてから、無電圧でPASを開放する
- SO動作による1回の停電は波及事故には該当しない。
- GR要素は通常の地絡継電器と同じ
SOGは高圧需要家にとって、とても大切な保護装置です。特にSO要素についてはキチンと理解しておきましょう。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
コメント
いつも拝見して勉強させていただいております。
サージ吸収用コンデンサとはなんでしょうか?
知っておりましたら教えてください。よろしくお願いします!
しょうたさま
いつも当サイトをご覧いただきありがとうございます。
また返信が遅くなり申し訳ございません。
サージ吸収用コンデンサは、雷によるサージ電圧や短絡等の電気事故時の異常電圧を緩和するものです。
主に発電所などに設置されるようです。
私も現物は1度しか見たことありませんが、それは水力発電所でした。
殆ど取り扱うことが無いので、詳しく勉強したことはありません。
以上よろしくお願い致します。