どうもじんでんです。今回はフェランチ効果についての解説です。
フェランチ効果とは?
通常の交流回路の送電線においては、送電端電圧より受電端電圧が低くなります。これは送電線のインピーダンスによって電圧降下を起こす為です。
しかし特定の状況下では、送電端電圧より受電端電圧が高くなる現象が発生します。
この現象をフェランチ効果といいます。
フェランチ効果の名称の由来は、発見した「セバスチャン・フェランティ」からきています。
フェランチ効果を図で考える
送電線につながる負荷は、電動機などを代表に誘導性負荷が多く、遅れ力率となる事が多いです。これにより電流は電圧に対して遅れ力率となります。これから送電線に流れる電流も遅れ力率となります。
また送電線自体に抵抗成分とインダクタンス成分があります。これを図で表すと次の通りとなります。
ベクトル図に表すと次の通りとなります。
送電線の抵抗成分にかかる電圧は、負荷電流と同相になります。
インダクタンス成分にかかる電圧は、抵抗成分に対して90°進みとなります。
これらと受電端電圧の合成が、送電端電圧となるので送電端電圧の方が高くなる事がわかります。これが通常の状態です。
ではフェランチ効果が発生する状況は、どのような時でしょうか。それは電流が遅れ力率ではなく、進み力率となる場合です。進み力率となる要因などは後述します。
この時の状態をベクトル図で表すと次の通りになります。
通常時と同様に、抵抗にかかる電圧は同相で、インダクタンス成分にかかる電圧は90°進みます。
図で見てわかるように、送電端電圧が受電端電圧より低くなっています。
これがフェランチ効果です。
フェランチ効果が起こる要因
先程、進み力率になるとフェランチ効果が起こると言いました。この状態になるにはいくつかの要因があります。
コンデンサによるもの
需要家には力率改善用コンデンサが設置されています。これはコンデンサの進み電流で遅れ電流を打消し、力率を改善する為のものです。通常時はこれでも全体で見れば、遅れ力率となっています。
しかし夜間や連休など工場の稼働が少なくい軽負荷時に、コンデンサの進み電流が遅れ電流を上回ると進み力率となります。
ケーブルの静電容量によるもの
高圧ケーブルなどは、静電容量が多く含まれます。これは値は小さいですが、コンデンサと同じ効果があります。よって高圧ケーブルが多く使用される配電線などは、前述と同じ軽負荷時にフェランチ効果が発生する可能性があります。
フェランチ効果による影響
フェランチ効果が発生すると、受電端にて電圧が上昇します。送電電圧が一定と考えるなら、フェランチ効果が発生している時はいつも以上の電圧が、各機器にかかっていると言えます。
電路の過電圧は、機器の劣化を早めたり、絶縁劣化を早めたりなどの悪影響が考えれれます。
フェランチ効果への対策
フェランチ効果は送電線への悪影響があり、対策が必要です。フェランチ効果への対策は、基本的に進み力率にならない様にする事です。
対策として次の2つが挙げられます。
分路リアクトルの設置
分路リアクトルを必要に応じて接続する事で、遅れ電流を発生させて進み電流を打ち消します。これにより進み力率となることを防ぎます。
コンデンサを切離す
需要家に設置してある力率改善用コンデンサを、軽負荷時に切離す事も対策の1つです。自動力率調整器による適正な力率の維持が必要です。
常時接続状態の需要家には、電力会社から切り離しを依頼される事もあります。
補足
説明の中で、軽負荷時にフェランチ現象が発生すると言いました。しかし現在では、日中でもフェランチ現象が発生しうる状況です。その理由は次の通りです。
現在は、殆どの高圧需要家にコンデンサが設置されています。その容量も過剰な事が多く、常時進み力率となっている場合が多いです。また小規模な需要家では、自動力率調整器が設置されておらず、常時接続状態であるのも要因です。
これにより系統によっては、適正電圧の維持が困難な状況であるともいわれています。また太陽光発電設備もこれらの影響を受けて、過電圧による停止などのトラブルもあるようです。
コメント