どうもじんでんです。殆どの高圧受電設備に設置されている保護継電器といえば、地絡継電器(GR)ですね。SOG制御装置の一部として設置されています。現在ではもらい事故防止で、より高性能な地絡方向継電器(DGR)がよく設置されています。
そんな地絡方向継電器(DGR)の動作特性で、疑問に思ったことはないでしょうか?メーカーによって違いますが、最大感度角は30°や45°となっています。なぜ0°ではないのか?30°になっている理由は?などと思ったことありませんか?
ここでは地絡方向継電器(DGR)の最大感度角について解説します。
地絡方向継電器(DGR)とは?
地絡方向継電器とは、地絡を保護する目的で設置される保護継電器です。同様の保護継電器に地絡継電器がありますが、これは構外の地絡で不必要動作するもらい事故の可能性があります。
しかし地絡方向継電器は電流と電圧の位相から、構内事故か構外事故かを判断し、構内事故でしか動作しないようになっています。
地絡方向継電器の詳細は、こちらの記事をご覧下さい。
DGRの最大感度角を考える
地絡方向継電器の動作特性図を見たことはありますか?動作特性図は下記の図です。
この図では電流Io整定値を0.2Aとしており、右側の動作域に入ると動作します。しかし逆側の不動域では動作しません。この通り0°側が構内事故で、180°側が構外事故と判断していることが分かるかと思います。
ただし動作域の半円が傾いていることも分かります。
最大感度角とは?
位相が関係する保護継電器には、最大感度角というものがあります。最大感度角とは、幅のある動作域の中心の位相角を指します。
例えば動作域がLEAD90°-LAG90°の場合の最大感度角は0°です。
最大感度角について詳しくは、こちらの記事をご覧下さい。
地絡方向継電器の最大感度角
地絡方向継電器には様々なメーカーや機種がありますが、最大感度角は概ねLEAD30°〜50°くらいです。
※一般的な非接地系統用の場合です。PC接地系統用では異なります。
ここでは最大感度角をLEAD40°とします。最大感度角がLEAD40°ということは、180°の動作域があればLEAD130°〜LAG50°の範囲が動作域となります。
この様に地絡方向継電器の最大感度角は0°ではありません。進み(LEAD)側に少しズレています。
最大感度角が0°ではない理由
地絡方向継電器の最大感度角を考えるには、まずは地絡時の地絡電流の流れを知る必要があります。
地絡時の電流の流れ
日本では、一般的に高圧配電は6.6kVの非接地方式が採用されています。この系統で完全一線地絡が発生すると、下記の図のような地絡電流が流れます。
ここで地絡点に流れる電流は2つに分類できます。
- 系統の対地静電容量による電流
- EVTによる電流
対地静電容量に起因する電流は、系統に接続されるケーブルなどから流入してきます。これは静電容量からの電流なので、電流としては進み90°の特性があります。
EVTに起因する電流は、地絡したことにより零相電圧が発生し、EVTに零相電圧がかかることで流れる電流です。EVTの三次回路に制限抵抗が接続されており、模擬的に一次側に抵抗が挿入されていることとなります。
よってこの電流は抵抗成分からの電流なので、位相は0°の電流となります。
よって事故回路の地絡点には、上記の2つの電流の合成が流れます。
ベクトル図で考える
2つの電流をベクトル図で合成して考えます。
静電容量による電流IcはLEAD90°、EVTによる電流Irは0°の特性があります。よって地絡点に流れる合成電流Ircは、0°からLEAD90°の範囲内になります。対地静電容量は、系統によって変動するので電流の大きさは変動します。しかしEVTによる電流は、安定して流れます。
仮にこの2つの電流の大きさが同じであれば、合成電流はLEAD45°の特性になります。
また地絡方向継電器は、健全回路であれば動作しないことも重要です。健全回路であれば、対地静電容量による電流IcがZCTのL→Kと逆向きに流れることで遅れ90°となります。
これらを地絡方向継電器の動作特性図と合わせて書くと、下記のようになります。
図のように事故回路であればLEAD45°付近を流れ、健全回路であればLAG90°の向きに電流が流れます。これが地絡方向継電器の最大感度角が0°ではない理由です。
まとめ
- 地絡方向継電器の最大感度角は30°〜50°
- 地絡点には、LEAD90°の電流と0°の電流が流れる
- 健全回路には、LAG90°の電流が流れる
地絡方向継電器は、構内事故か構外事故かを判断するものという認識はあると思います。しかし事故に流れる電流の位相については、認識が薄い人も多いのではないでしょうか。地絡方向継電器は需要設備において、とても重要な保護継電器です。よく理解しておきたいですね。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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