どうもじんでんです。電気の測定には色々なものがあります。電流、電圧、電力量などがありますが、現場で大事になってくるのが絶縁抵抗測定です。
絶縁抵抗測定は、漏電の危険度を確認する試験とも言えます。
しかし簡単そうに見えて、色々なポイントがあります。間違って使用すると、正しい結果が得られずに誤った判断をする可能性があります。
ここでは絶縁抵抗測定における、確認ポイントと方法について解説します。
絶縁抵抗測定とは?
電気配線には、必要ないところに電気が流れない様に絶縁処理が施されています。絶縁処理の代表的なところでは、絶縁被覆が挙げられます。
コンセントに差すコードも、絶縁被覆があるおかげで人が感電せずに済んでいます。
そんな状態を絶縁と言います。またその大きさを絶縁抵抗、数値化したものを絶縁抵抗値と呼びます。
絶縁抵抗値が大きいほど、電気を通しにくいと言えます。また低いと漏電の危険があるとも言えます。
絶縁抵抗については詳しくは、こちらの記事をご覧下さい。
絶縁抵抗値を測定する行為を絶縁抵抗測定と言います。絶縁抵抗測定に使用する計測器を絶縁抵抗計と呼びます。絶縁抵抗計は「メガー」とも呼びます。
絶縁抵抗測定は、主に点検時に実施します。年次点検や竣工検査を始め、工事後の確認や漏電調査でも測定します。
絶縁抵抗測定は電気主任技術者や電気工事士など、電気に関わる仕事では必ず知っておきたい項目でもあります。使い方を間違えれば誤った判断をし、漏電や感電の危険を見つけることができない可能性もあります。
絶縁抵抗計の使い方【基礎編】
絶縁抵抗測定をするにあたり、絶縁抵抗計の基本から解説します。
一般的な絶縁抵抗計は、大きく2つの部分に分類できます。
- 本体
- 測定コード
本体には計測値を表示するメーターや、電源ボタン、測定ボタン、レンジ切替ボタンなどが搭載されています。
測定コードには2つのコードがあり、ライン側とアース側があります。一般的にはライン側が赤色、アース側が黒色となっています。またライン側は、測定する側なので先端は針状となっています。アース側は接地するので、先端はクリップ状になっています。
絶縁抵抗計によっては、先端を任意のものに付け替えて使用できるものもあります。
またメーター部分は、主にアナログ式とデジタル式があります。それぞれ一長一短があります。
絶縁抵抗計のアナログ式とデジタル式の違いについては、こちらの記事で解説しています。
絶縁抵抗計の使い方【使用前編】
絶縁抵抗測定は、漏電の原因などを特定する為に使用されます。よって正しい結果を得られないと、漏電の危険を放置してしまうこととなります。
また絶縁抵抗計には、使用前に確認すべきいくつかのポイントがあります。このポイントを押さえておかないと、正しい測定ができません。
バッテリーチェック
絶縁抵抗計で始めに確認するべきは、電池残量の確認です。絶縁抵抗計の殆どの製品は、乾電池で動作しています。この残量が充分にあるかの確認を、一般的にバッテリーチェックと呼んでいます。
殆どの製品で、バッテリーチェック機能が搭載されています。それぞれの方法で確認をしましょう。
中には「電池残量がなければ動かないから確認は不要では?」と思われるかもしれません。しかしそれは間違いです。
今までの経験上で、電池残量がごく僅かな状態では、針は動くけど結果がおかしい事がありました。違和感があり気づく事ができましたが、気づかなければ誤った判断をするところでした。
よって電池残量は、充分にある状態で使用しましょう。残り僅かなら、動作するにしても電池を交換するべきです。
オープンチェック
絶縁抵抗計の機能に問題がない事を確認する為に、オープンチェックを実施します。
絶縁抵抗計の測定コードの先端をどこにも接続しない状態で、測定ボタンを押します。すると正常であれば、最大値である無限(∞)やオーバーの表示をします。
これをオープンチェックと呼びます。
この時に測定コードの先端には、電圧が発生するので注意が必要です。
もしも正常な表示をしなければ、絶縁抵抗計に問題があります。これでは正しい結果が得られません。
ゼロチェック
測定コードの断線や、接地端子が問題ないことを確認する為にゼロチェックをします。
測定コードの先端を短絡して測定ボタンを押すと、正常ならば0MΩを表示します。これは測定コードが断線していないかを確認しています。もし断線していれば、∞やオーバーを表示します。0MΩ以外を表示したら、コードの断線が疑われます。
またゼロチェックには、もう1つの意味合いがあります。
絶縁抵抗測定を対地間で行う場合は、アース側を接地端子に接続します。もしこの接地端子が正常に接地されていなければ、測定してもなんの意味もありません。
これを防ぐ為、使用する接地端子がきちんと接地されているかを確認するのにもゼロチェックをします。
方法はアース側を接続した接地端子以外の、確実に接地されている箇所にライン側を接触させて測定ボタンを押します。接地が問題なければ、0MΩを表示します。これ以外を表示すれば、アース側を接続した端子は接地がされていないこととなります。
現場次第では、確実に接地されている箇所がない場合があります。そんな時は、B種接地を活用しましょう。殆どの場合、ブレーカーの1端子は接地されています。
※特殊な現場では非接地の可能性もゼロではありません。
他にも建屋の金属部や水道管も接地極として使用可能な場合があります。
絶縁抵抗計の使い方【測定編】
絶縁抵抗測定には、2つの種類があります。それは対地間測定と線間測定です。
よく使用されるのは対地間測定です。線間測定は、竣工検査などで実施されます。
それぞれ測定コードの接続など、違いがあるので注意しましょう。
また絶縁抵抗測定は、対象回路が無電圧であることが絶対条件です。測定前に測定対象の回路が無電圧であることを確認しましょう。
絶縁抵抗計には、充電している場合に警告を出す機能を持っているものもあります。それらを活用しましょう。
対地間測定
対地間測定は、試験物と大地の間の絶縁を測定します。対地間の測定は、漏電が無いかを確認できます。定期点検や、漏電調査ではこの対地間測定を実施します。
対地間測定ではアース側を接地極に、ライン側を試験物の導体部に接続します。
ブレーカーの二次側からの測定では、基本的には接続される負荷に電圧が回り込みます。よってブレーカーの1相を測定すれば良いですが、負荷の状態が把握できない場合は、全ての相を測定する様にしましょう。全ての相を測定することで、確実な結果を得ることができます。
電灯回路で例えると、R相-N相回路に照明、T相-N相にコンセントが接続されているとします。またコンセントには、機器は何も接続されていないとします。この状態でN相を測定すると、R相は照明によって電圧が回り込むので同時に測定できています。しかしT相はどこも繋がっていないので測定できていません。
線間測定
線間測定は、電線の相間の絶縁抵抗を測定します。線間測定は、短絡が無いかを確認できます。工事後の竣工検査などで実施されます。
線間測定では、測定したい2線の導体部にライン側とアース側をそれぞれ接続します。
線間測定で重要なのは、負荷が接続されていない状態で測定しないといけない事です。負荷が接続されていると、正常に測定できません。
注意事項
絶縁抵抗測定には注意しなければいけない点があります。
測定電圧に注意
絶縁抵抗計には、測定電圧が複数あります。測定電圧のことをレンジとも言います。
機器によっては、測定電圧の上限が定められている場合があります。また使用電圧より大幅に超える電圧での測定は、機器を破損させる可能性があります。
使用前にレンジの確認を充分にしましょう。
ライン側とアース側を逆に接続してはいけない
対地間測定を実施するにあたり、状況によってはライン側とアース側を逆に接続した方が測定しやすい場合があります。
具体的にはライン側を接地極へ、アース側を導体部へといった感じです。
しかしこの接続では、正しい測定ができません。正しい接続と比べて、結果に相違がでる場合があります。
これは絶縁抵抗計の出力電圧が直流であり、極性があることに起因しています。
絶縁抵抗計(メガー)の極性について、詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
まとめ
- 使用前に、きちんとチェックしてから測定する
- 測定対象回路は無電圧であることを確認する
- 対地間測定と線間測定がある
- レンジには要注意
絶縁抵抗測定は、電気の測定としてよく実施されます。しかし使い方を間違えると、誤った判断をしたり負荷設備を壊してしまったりします。
特に漏電調査では、誤った判断で放置する事となれば重大な事故に繋がります。使用方法をしっかり理解しておきましょう。
また絶縁抵抗計の選び方やおすすめの絶縁抵抗計を紹介しています。併せてご覧ください。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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