絶縁監視装置の漏電検出方式の違い

絶縁監視装置の漏電検出方式の違い 高圧受電設備
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どうもじんでんです。電気設備において、最も恐ろしいことはなんでしょうか?

色々なことが挙げられますが、私は漏電だと思っています。漏電は本当に恐ろしく、感電や火災の原因となります。

一般家庭では漏電ブレーカーによって、多くの漏電は防がれています。しかし工場やビルなどの自家用電気工作物では、漏電ブレーカーがない回路など、漏電が継続的に発生する状況があります。

そんな漏電を検知して、危険を知らせてくれる装置があります。それが絶縁監視装置です。ただ絶縁監視装置と言っても、漏電の検出方式が色々とあります。検出方式の種類は知っていても、その原理や特徴は知らない人も多いのではないでしょうか?

今回はそんな絶縁監視装置の検出方式について解説します。

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絶縁監視装置とは?

絶縁監視装置とは、「低圧電路の絶縁状態の的確な監視が可能な装置」とされています。変圧器のB種接地線に流れる漏れ電流を計測することで、絶縁状態を監視しています。

主任技術者制度の解釈及び運用(内規) では警報動作電流の設定値の上限値は50mAで、設定値以上の漏電が連続して5分以上発生した場合や、5分未満の漏えい警報を繰り返した場合に警報を発生させる事となっています。

また絶縁監視装置を設置することで、その他の条件もありますが毎月点検を隔月点検にすることが可能です。保安管理業務外部委託制度では、換算係数を圧縮することにも繋がります。

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検出方式の種類

絶縁監視装置における、検出方式は3つの種類があります。それは次の3種類です。

  • Io方式
  • Ior方式
  • Igr方式

それぞれについて解説します。

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Io方式

Io方式は、最も単純で簡単な検出方式です。漏電リレーや計測器のクランプメーターもこの方式であることが多いです。

しかし直接の漏電とはならない、対地静電容量に起因する電流Iocを含む電流を検出します。現在は対地静電容量を多く含む機器が増えている事から、常に過大な電流を検知している状態になる事も多いです。

電流Iocを含む、漏れ電流をIoと表記します。

Io方式の検出原理

Io方式では、絶縁監視装置本体と検出用ZCTで構成されます。

絶縁監視装置のIo方式のシステム構成

絶縁監視装置に入力される電流はIoとなり、電流Iocが大きいと電流Iorが小さくても過大な電流となります。

絶縁監視装置のIo方式の検出原理

Io方式では、接地相が絶縁劣化しても漏れ電流が流れないので検出が不可能です。

接地相が絶縁劣化しても漏電しない理由については、こちらの記事をご覧ください。

Io方式の特徴

Io方式は、検出方式としては最も精度が低いです。しかし単純な検出方式なので、システム構成が簡単で設置しやすい事がメリットです。またその為、装置も他に比べて安価です。

検出の特徴として、次のことが挙げられます。

  • 接地相の絶縁不良は検知できない
  • 対地静電容量に起因する電流Iocを含む電流を検知するので過大になりやすい
  • いかなる変圧器の結線方式にも適用できる

Ior方式

Ior方式は、Io方式を進化させた方式と言えます。

Io方式で説明した通り、漏れ電流Ioには対地静電容量に起因する電流Iocを含んでいます。

しかし電流Iocは漏電や感電の原因とはなりません。漏電や感電の原因となるのは、抵抗分の電流Iorとなります。

よって電流Iorを検出することで、Io方式より正確に漏電を検知できます。

Ior方式の検出原理

Ior方式では、絶縁監視装置本体と検出用ZCTで構成されます。また位相が必要となるので、絶縁監視装置に電圧を入力する必要があります。

絶縁監視装置のIor方式のシステム構成

絶縁監視装置に入力される電流はIoですが、装置内で位相から演算して電流Iorを算出します。

絶縁監視装置のIor方式の検出原理

Ior方式でもIoが元となっているので、Io方式と同じく接地相の絶縁劣化は検出不可となります。

Ior方式の特徴

Ior方式では、電流Ioと電圧との位相から演算することで、電流Iorを算出しています。システム構成はIo方式と殆ど変わりませんが、演算する為に本体が高価となっています。3つの方式の中では、費用としては中間と言えます。

検出の特徴として、次のことが挙げられます。

  • 漏電や感電の原因となる抵抗分の電流Iorを検出できる
  • 接地相の絶縁不良は検知できない
  • 各相の対地静電容量の差が大きいと誤差が大きくなる
  • V結線など、変圧器の結線によっては適用できない

Igr方式

Igr方式は、これまでのIo方式やIor方式とは少し違う検出方式です。

Io方式もIor方式も、接地相の絶縁不良を検知できない、対地静電容量による影響で正確に検知できないなどの問題があります。

Igr方式では、より正確に絶縁不良を検知することができます。

Igr方式の検出原理

Igr方式では、絶縁監視装置本体と検出用ZCT、重畳用変成器で構成されます。

絶縁監視装置のIgr方式のシステム構成

重畳用変成器より数十㎐の低周波電圧を回路に重畳します。検出用ZCTにて重畳した分による漏れ電流のみを検出し、絶縁監視装置内で商用周波数相当に変換して漏れ電流を算出します。

また重畳電圧を注入することから、接地相の絶縁劣化も検出することが可能です。

Igr方式の特徴

Igr方式では、重畳用変成器などが必要なことから、高価で本体も大型な傾向があり、導入のハードルが高いです。

検出の特徴としては、次のことが挙げられます。

  • 接地相も含めて絶縁不良を検知できる
  • 対地静電容量の影響を受けにくい
  • 負荷設備による強いノイズがあると正確に検出できない

まとめ

  • 絶縁監視装置の漏電検出方式には種類がある
  • 種類によってメリットデメリットがある
  • 費用が1番安価なのはIo方式
  • 検出精度が高いのはIgr方式

絶縁監視装置は漏電を検出して警報を出す重要な設備です。また警報が出た場合は漏電箇所の特定が必要です。しかし今回の検出方式の仕組みを理解しておかないと、特定まで時間を要する場合もあります。

キチンと理解しておきましょう。

この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人
じんでん

当サイトの運営者。
電気設備の保守管理の仕事に携わっています。専門知識ってネットでは出てこないか、難しすぎるって場合がおおくないですか?そこで私は電気関係の仕事で役立ちそうな情報を簡単に分かりやすく発信しています。
〔保有資格〕
・第3種電気主任技術者
・第1種電気工事士
・消防設備士

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