どうもじんでんです。高圧受電設備では、多くの種類の保護継電器があります。その中でも、多くの現場に設置されている基本的な保護継電器の1つとして過電流継電器があります。
過電流継電器を扱う中で、難しいのが保護協調です。その保護協調を考える上で大事なのが、動作時間特性となっています。
過電流継電器の動作時間特性を理解する事が、保護協調を理解する第1歩となると言っても過言ではありません。
ここでは過電流継電器の動作時間特性について解説します。
YouTubeでも解説しています。
過電流継電器(OCR)とは?
過電流継電器(OCR)とは、過負荷や短絡から回路を保護する保護継電器です。計器用変流器(CT)より電流を入力して、電流の大きさを監視しています。入力される電流が整定値を超え、一定時間継続すると動作します。そして過電流継電器(OCR)から信号が発信され、遮断器を開放します。
過電流継電器(OCR)について詳しくは、こちらの記事をご覧下さい。
動作時間特性の見方
過電流継電器(OCR)は、基本的に2つの要素を持っています。
※機種によっては限時要素のみの場合もあります。
- 限時要素
- 瞬時要素
この2つは異なる動作時間特性を持っています。2つの要素を合わせたものが、過電流継電器(OCR)の動作時間特性となります。
まずはそれぞれの要素の動作時間特性を考えてから、合わせた過電流継電器(OCR)としての動作時間特性を考えましょう。
限時要素
限時要素は電流が大きくなるほど、早い時間で動作する反限時特性を持っています。
図では、縦軸が時間で横軸が電流の大きさとなっています。上にいくほど時間が遅く、右にいくほど電流が大きいと言えます。
下記の例を元に具体的に解説します。
ここからは電流を軸に考えます。
電流が小さいポイントAでは、動作時間は10秒となっています。しかし電流が大きいポイントBでは、動作時間は1秒となっています。
この様に、電流が大きいほど早い時間で動作する事がわかります。
瞬時要素
瞬時要素は電流の大きさに関わらず、一定の時間で動作する定限時特性を持っています。
図では、縦軸が時間で横軸が電流の大きさとなっています。上にいくほど時間が遅く、右にいくほど電流が大きいと言えます。
一定の電流値を超えると、どこでも同じ時間で動作する事が図から分かります。
2つの要素を合わせてた動作時間特性
ここまで限時要素と瞬時要素のそれぞれについて解説してきました。しかし実際の過電流継電器(OCR)は、これら2つの要素を併せ持っています。
よって過電流継電器(OCR)の動作時間特性は、限時要素と瞬時要素を合体させたものとなります。
それが下の図となります。
限時要素のカーブの先で、瞬時要素に繋がっている感じです。この図では300Aを超えた段階で、瞬時要素の範囲になるのでそこが境目となります。
動作時間特性の種類
まず限時要素は反限時特性を持っています。そして反限時特性はカーブを描いています。
保護協調を考えるときに、上位や下位の保護装置と動作時間特性が被らない様にする必要があります。しかし状況によっては保護協調が困難となる時があります。
そんな時に限時要素の特性を変更して、保護協調を取る事ができます。
限時要素には主に下記の4つの特性があります。
- 反限時特性(NI)
- 強反限時特性(VI)
- 超反限時特性(EI)
- 定限時特性(DT)
過電流継電器(OCR)の製品によって変更できるものや、特性が固定されたものが存在します。最近の製品であれば、殆どが特性の変更に対応しています。
それぞれの特性の特徴や用途について解説します。
反限時特性(NI)
反限時特性は、NIとも表現し「Normal Inverse」の略称です。
送電線の保護に適しています。
強反限時特性(VI)
強反限時特性は、VIとも表現し「Very Inverse」の略称です。
配電線や変圧器の保護に適しています。
超反限時特性(EI)
超反限時特性は、EIとも表現し「Extremely Inverse」の略称です。
ヒューズの特性カーブに似ており、機器の保護に適しています。
定限時特性(DT)
定限時特性は、DTとも表現し「Definite Time」の略称です。
瞬時要素と同じ考え方です。電流が一定を超えると、電流の大きさに関わらず同じ時間で動作します。
保護協調を考える時の考え方
実際の保護協調を考えた時に、動作時間特性が上位や下位と被る時があります。そんな時は過電流継電器の動作電流や時間の整定値を変更して、他と被るのを回避する必要があります。
では過電流継電器の整定値を変更すると、どの様に動作時間特性カーブが変わるのでしょうか。
実際の図で解説します。
特性の変更
特性を変更すると、カーブの形が変化します。
しかし特性の変更は瞬時要素に関係しないので、その部分は同じとなります。
瞬時要素の動作電流の変更
瞬時要素の動作電流を変更すると、動作時間特性カーブの瞬時要素部分が左右に移動します。動作電流を大きくすると右へ、小さくすると左へ移動します。
限時要素に変更が無ければ、限時要素の部分は同じになります。
限時要素の動作電流の変更
限時要素の動作電流を変更すると、動作時間特性カーブの限時要素部分が左右に移動します。動作電流を大きくするとカーブは右へ、小さくすると左へ移動します。
しかし瞬時要素に変更が無ければ、境目は同じポイントとなります。
動作時間の変更
動作時間を変更すると、動作時間特性カーブが上下に移動します。動作時間(ダイヤル)を大きくするとカーブは上へ、小さくすると下へ移動します。
まとめ
- 過電流継電器の動作時間特性は限時要素と瞬時要素からなる
- 限時要素の特性は種類がある
- 特性や動作電流、動作時間を変更すると動作時間特性カーブが変化する
過電流継電器(OCR)の動作時間特性は、非常に難しい内容となっています。整定値によりカーブが変化するので、それを上手く保護協調に当てはめなければなりません。
保護協調を理解するきっかけになればと思います。
この記事が皆さまのお役に立てれば幸いです。
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