どうもじんでんです。2023年3月20日に電気事業法が改正されて、小規模発電設備という言葉が新たにできました。これはこれまで小出力発電設備と呼んでいたものが、置き換えられた様な感じです。
ここでは小規模発電設備について解説します。
※この記事は、2023年3月20日改正の電気事業法などの内容に基づいています。今後、新たに改正されて内容に変更があった場合は、早めに修正を実施しますが追いつかない可能性があります。参考にされる場合は改正日をご確認下さい。
小規模発電設備とは?
小規模発電設備とは、2023年3月20日に改正された電気事業法にて新たに追加されたものです。
これまで小出力発電設備と区分して呼称していたものが、小規模発電設備へと名称が変更となりました。
これまで小出力発電設備は全て一般用電気工作物の対象でした。しかし小規模発電設備は出力によって、一般用電気工作物となるものと小規模事業用電気工作物となるものに分かれるので注意が必要です。
小規模発電設備と同時に、小規模事業用電気工作物という言葉も新たに追加されました。非常によく似ていますが、内容は若干違います。混同しないように注意しましょう。
発電設備は基本的に事業用電気工作物となり、電気主任技術者の選任などが必要となります。しかし出力に制限を設けて、小規模な発電設備は一般用電気工作物として扱うようにするのが、小規模発電設備の目的です。
特に近年の一般家庭への太陽電池発電設備の導入も、この小規模発電設備に該当するので様々な法規制の対象外となり、導入を容易にしています。
小規模発電設備の定義
小規模発電設備は電気事業法第38条第一項にて定められています。
また対象となる各発電設備の種類や容量については、電気事業法施行規則第48条第2項で定められており、次の様になっています。
2 法第三十八条第一項ただし書の経済産業省令で定める発電用の電気工作物は、次のとおりとする。ただし、次の各号に定める設備であって、同一の構内に設置する次の各号に定める他の設備と電気的に接続され、それらの設備の出力の合計が五十キロワット以上となるものを除く。
一 太陽電池発電設備であって出力五十キロワット未満のもの
二 風力発電設備であって出力二十キロワット未満のもの
三 次のいずれかに該当する水力発電設備であって、出力二十キロワット未満のもの
イ 最大使用水量が毎秒一立方メートル未満のもの(ダムを伴うものを除く。)
ロ 特定の施設内に設置されるものであって別に告示するもの
四 内燃力を原動力とする火力発電設備であって出力十キロワット未満のもの
五 次のいずれかに該当する燃料電池発電設備であって、出力十キロワット未満のもの
イ 固体高分子型又は固体酸化物型の燃料電池発電設備であって、燃料・改質系統設備の最高使用圧力が〇・一メガパスカル(液体燃料を通ずる部分にあっては、一・〇メガパスカル)未満のもの
ロ 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車並びに被牽引自動車を除く。)に設置される燃料電池発電設備(当該自動車の動力源として用いる電気を発電するものであって、圧縮水素ガスを燃料とするものに限る。)であって、道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令第六十七号)第十七条第一項及び第十七条の二第五項の基準に適合するもの
六 発電用火力設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十一号)第七十三条の二第一項に規定するスターリングエンジンで発生させた運動エネルギーを原動力とする発電設備であって、出力十キロワット未満のもの
引用:e-GOV 法令検索 電気事業法施行規則
上記に記載される発電設備は全て小規模発電設備の対象です。
一般用電気工作物か小規模事業用電気工作物か
小規模発電設備は種類や出力によって、一般用電気工作物か小規模事業用電気工作物かが分かれます。
一般用電気工作物の対象
電気事業法第38条第一項2号では、一般用電気工作物は次の通りと定められています。
二 小規模発電設備であつて、次のいずれにも該当するもの
イ 出力が経済産業省令で定める出力未満のものであること。
ロ 低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないものであること。
引用:e-GOV 法令検索 電気事業法
「イ」に記載される経済産業省令で定めるものとは、電気事業法施行規則第48条第4項で次の様に定められています。
4 法第三十八条第一項第二号イの経済産業省令で定める出力は、次の各号に掲げる設備の区分に応じ、当該各号に定める出力とする。
一 太陽電池発電設備 十キロワット(二以上の太陽電池発電設備を同一構内に、かつ、電気的に接続して設置する場合にあっては、当該太陽電池発電設備の出力の合計が十キロワット)
二 風力発電設備 零キロワット
三 第二項第三号イ又はロに該当する水力発電設備 二十キロワット
四 内燃力を原動力とする火力発電設備 十キロワット
五 第二項第五号イ又はロに該当する燃料電池発電設備 十キロワット
六 発電用火力設備に関する技術基準を定める省令第七十三条の二第一項に規定するスターリングエンジンで発生させた運動エネルギーを原動力とする発電設備 十キロワット
引用:e-GOV 法令検索 電気事業法施行規則
電気事業法施行規則第48条第4項の出力と小規模発電設備の対象の出力を比較すると、殆どの発電設備が同じとなります。これは殆どの発電設備は、一般用電気工作物の対象であることを指しています。
小規模発電設備で一般用電気工作物の対象外となるのは、太陽電池発電設備と風力発電設備の2つです。
太陽電池発電設備については、出力が10kW未満なら一般用電気工作物です。
小規模事業用電気工作物の対象
また小規模事業用電気工作物については、電気事業法第38条第3項で次の様に定められています。
3 この法律において「小規模事業用電気工作物」とは、事業用電気工作物のうち、次に掲げる電気工作物であつて、構内に設置するものをいう。ただし、第一項ただし書に規定するものを除く。
一 小規模発電設備であつて、次のいずれにも該当するもの
イ 出力が第一項第二号イの経済産業省令で定める出力以上のものであること。
ロ 低圧受電電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないものであること。
引用:e-GOV 法令検索 電気事業法
「イ」については、前述の電気事業法施行規則第48条第4項と同じです。
電気事業法施行規則第48条第4項の出力を各設備ごとに見ると、殆どが小規模発電設備と同じ出力になっています。
これは要約すると、殆どの発電設備は小規模事業用電気工作物の対象外であることを指しています。
小規模事業用電気工作物の対象は下記の通りです。
- 太陽電池発電設備で出力が10kW以上~50kW未満のもの
- 風力発電設備で出力が20kW未満のもの
電気事業法施行規則第48条第4項の出力を基準に、出力が未満か以上かで一般用電気工作物か小規模事業用電気工作物かが分かれます。
小規模発電設備の対象一覧表
法の定義については前述しましたが、小規模発電設備の対象について簡単に表にまとめておきます。
下記の表は全て、小規模発電設備の対象です。
設備 | 出力 | 電気工作物の区分 | 備考 |
---|---|---|---|
太陽電池発電設備 | 10kW未満 | 一般用電気工作物 | |
〃 | 10kW以上~50kW未満 | 小規模事業用電気工作物 | |
風力発電設備 | 20kW未満 | 小規模事業用電気工作物 | |
水力発電設備 | 20kW未満 | 一般用電気工作物 | 条件あり |
内燃力を原動力とする 火力発電設備 | 10kW未満 | 一般用電気工作物 | |
燃料電池発電設備 | 10kW未満 | 一般用電気工作物 | 条件あり |
スターリングエンジンで 発生させた運動エネルギーを 原動力とする発電設備 | 10kW未満 | 一般用電気工作物 | 条件あり |
コメント
お世話になっております。 いつも拝読させていただいております。 第三種電気主任技術者をやっております。 本サイトにて 10~50kWの太陽光発電の扱いが 小出力発電設備から小規模事業用電気工作物という扱いに変更になったのだと知り、新たに 保安規定や、電気主任技術者の登録が必要になったのか、と慌てた次第です。 (実際は、基礎情報の届出なるもの)経済産業省の本件に関わる特設サイトにて 3月20日以前にFITの認定が済んでいるものは、対象外と知り 安心しました。
そこで質問ですが、
じんでん様は、どのようにこの情報を入手されましたか?
例えば どこかのサイトに登録していると、法令が改正になるとメールが飛んでくるとか
そういうサービスがあったりするのでしょうか?
すみませんが、ご回答いただけますでしょうか?
Highlandfallsさま
コメントありがとうございます。
この様な情報は、私の場合は地道に情報収集しています。
定期的に経済産業省のHPを見たりしています。
またTwitterなどのSNSでも情報発信されている方もいるので、そこから情報を得たりしています。
残念ながら、情報が届くようなサービスは知りません。
電気主任技術者の業界は、情報が限られるのでそのようなサービスがあると良いですね。
私もできるだけ発信していきたいと思っております。
じんでん様
ご回答ありがとうございました。 お礼が遅くなり申し訳ありません。
了解しました。 日々の情報収集の努力が必要ということですね。
知らなかったお前が悪い というのは、そういうツールがなかった時代の話で
今や、これだけインターネットやSNSが発達しているのですから、法律改正時には、
登録者にメールが自動発信できるようなサービスを 国も行うべきだと思います。